3Dプリント活用の海底エネルギー貯蔵を米独が支援

3Dプリント技術を活用した海底エネルギー貯蔵プロジェクト「StEnSea」、米独から総額7.7百万ドルの支援を獲得

ドイツのフラウンホーファー研究機構の一部で、エネルギー関連技術を開発する研究所 Fraunhofer IEE、コンクリート3Dプリントのスペシャリストである Sperra、水中モーター・ポンプメーカー Pleuger Industries の共同プロジェクト「StEnSea(Stored Energy in the Sea)」が、米国エネルギー省の水力技術部門(WPTO)から400万ドル、ドイツ経済気候省(BMWK)から370万ドル、合計770万ドル(約11億7千万円)の支援を受けたことを発表した。

変電所と浮体式洋上風力発電所に接続された貯蔵パーク

StEnSeaプロジェクトは、2012年にフラウンホーファー研究所の研究者によって構想されたもので、ポンプ式水力発電の原理を海底環境に応用することで、エネルギー貯蔵時間を大幅に延ばすことを目指している。この技術の基本的なアイデアは、中空のコンクリート球体を深海に沈め、電力需要が低いときに水を排出して潜在的なエネルギーを蓄えるというものだ。球体は水深600~800メートルに設置され、電力需要が高まった際に水が流れ込むことで、ポンプが発電用タービンとして機能するよう設計されている。
このシステムは、既存のポンプ式水力発電に似ているが、海底という特殊な環境での活用が可能であり、深海の高い圧力を利用することで効率的にエネルギーを貯蔵・放出できる。

コンクリート3DプリントのスペシャリストであるSperraは、直径10メートルのエネルギー貯蔵ユニットの設計、製造、テストを担当。このユニットはカリフォルニア南部沖に設置される予定で、同社は独自の球体設計技術とコンクリート3Dプリント技術により球体を製造する。3Dプリント技術は従来のコンクリート製造と異なり、型枠を必要としないため生産効率が向上し、将来的には世界各地での現地生産が可能になる。GIS(地図情報システム)分析により、ノルウェー、ポルトガル、米国、ブラジル、日本沿岸など、海底エネルギー貯蔵の展開が見込まれる複数の候補地も特定されている。

3mの球体を使用して球状エネルギー貯蔵のフィールドテストを実施

SperraのCEO兼創業者であるJason Cotrell氏は「このプロジェクトは、電力網の脱炭素化に向けたエネルギー貯蔵の可能性を引き出す大きな一歩です。3Dプリントされたコンクリートによる海底ポンプ式水力発電は、エネルギー転換を加速し、地域の労働力や現地調達の材料を活用することができます。我々はFraunhofer IEEとPLEUGERとの国際的な協力に大きな期待を寄せており、Water Power Technologies Officeがこの取り組みの可能性を評価してくれたことに感謝しています」と述べた。


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