- 2025-1-15
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- 3DPrinting, 3Dプリンティング, filament, ISS, NASA, テクノロジー, フィラメント, 国際宇宙ステーション, 科学
無重力でも安定的に造形可能な新システムを開発し、軌道上の3Dプリント工場の実現へ
英国の国立大学グラスゴー大学の James Watt School of Engineering に所属する研究チームが、宇宙空間における3Dプリント技術を大きく前進させる新システムを開発し、特許を取得した。この技術は、従来の3Dプリンタで使用されるフィラメントがゼロ重力下で折れたり詰まったりする問題を克服し、軌道上でオンデマンドに構造物を製造するという未来を現実へと近づけるものである。
チームを率いるBailet博士によると、低重力環境で3Dプリント技術を活用することができれば、宇宙空間に「軌道上工場」を設置して必要なパーツや機材をその場で製造できるようになるという。例えば、宇宙空間に大型のソーラー反射板を3Dプリントして組み立てれば、地球へ膨大な量のエネルギーを送電できる可能性が高まる。また、微小重力環境で作製される結晶は地上よりも構造が整いやすいため、より純度の高い医薬品の研究開発にも期待が寄せられている。今回開発された新システムでは、真空や微小重力に対応するために粒状素材を使用している。この素材は、従来のフィラメント方式に比べて材料供給の安定性が高く、ノズルへの詰まりを最小限に抑えられる。さらに、研究チームは造形中に電子回路を組み込む技術にも取り組んでおり、宇宙空間で高度な機能をもつ構造部品を一体成形できる可能性を示している。
昨年11月には欧州宇宙機関(ESA)が実施するパラボリックフライト(無重量環境を再現する飛行実験)に参加し、3回のフライトで90回以上の短時間マイクログラビティ環境を得ることに成功。各フライトで装置の動作や電力消費量を検証した結果、粒状素材による安定した3Dプリントが可能であることが確認された。
今後は、宇宙空間での実証実験をサポートするための資金調達を進めるほか、UK Space Agency(英国宇宙局)の支援を受けながら、宇宙デブリ問題の解決に向けたリサイクル可能な3Dプリント技術の研究にも注力する予定である。Bailet博士は、この技術が地球上の資源消費を削減するだけでなく、軌道上での自由度の高いものづくりを実現し、将来的にはエネルギーや医薬品など多岐にわたる分野で革新的な成果をもたらすと期待している。
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