ノースカロライナ州立大学、導電性3Dおよび4Dプリンティング用金属ゲルを開発
米国の州立大学であるノースカロライナ州立大学の研究チームは、導電性が高く室温で固体物体を3Dプリントできる金属ゲルを開した。
4Dプリンティングとは、外部からの刺激に応答して形状が変化する3Dプリント構造のことである。今日まで4Dプリンティング技術は、主にポリマーのような電気絶縁材料に焦点を当ててきた。ポリマーに導電性フィラーを添加することで、プリント部品の機能性を高めることができるが、導電性を達成するために必要な高充填量は、プリント性とトレードオフの関係にある。この研究では、銅(Cu)粒子と柔らかい共晶ガリウム・インジウム合金(EGaIn)ブリッジを接続し、プリントに適したゲル状の特性を持つ導電性4Dプリントインク(Cu-EGaIn)を形成する。最終的なプリント部品は、総金属含有量が97.5wt%と高く、残りはレオロジー調整剤であるメチルセルロースである。プリント部品は、焼結工程を必要とせず、極めて高い導電性(1.05×105S/m)を有し、Cu-EGaInは、導電性とプリント性の矛盾を解決し、電子、熱、複合デバイスに新たな可能性を開くと期待されている。
ノースカロライナ州立大学のCamille & Henry Dreyfus化学・生体分子工学教授であるマイケル・ディッキー氏は「このゲル状の粘着性が重要なのです。なぜなら、銅粒子が材料全体にかなり均一に分布していることを意味するからです。そしてこれには2つの意味があります。第一に、粒子のネットワークがつながって電気経路を形成するということで、もうひとつは、銅粒子が溶液から沈殿してプリンターを詰まらせることがないということです」と説明。出来上がったゲルは、従来の3Dプリントノズルを使ってプリントすることができ、プリントしてもその形状を保つ。また、室温で乾燥させると、出来上がった3Dオブジェクトは形状を保持したままさらに強固になるという。
プログラムされた曲率を持つ4DプリントされたCu-EGaIn構造
研究者たちは、プリントしたオブジェクトが乾燥する間に熱を加えると、粒子の配置が物質の乾燥方法に影響を及ぼすことを発見。例えば、円筒形状のオブジェクトをプリントすると、乾燥により側面が上下よりも多く収縮する。室温で乾燥する際はプロセスが遅いため、オブジェクトの構造に変化は生じないが、熱を加える(例えば、80℃の熱灯下で乾燥させる)と、急速な乾燥により構造変形が引き起こされる。この変形は予測可能なため、プリント後にオブジェクトの形状を変えることもできる。これはプリントパターンと乾燥時にオブジェクトが受ける熱の量を制御することで可能になるという。
4Dプリンティングで作製した複雑な導電性スパイダーボット
マイケル・ディッキー氏は「このような4次元プリントは、従来の3次元に時間を加えたもので、希望する寸法の構造物を作るために使用できるツールのひとつである。しかし、私たちがこの材料について最もエキサイティングだと思うのは、その導電性である。プリントされた物体は最終的に97.5%もの金属になるため高い導電性を持つ。明らかに従来の銅線ほどの導電性はありませんが、銅線を室温で3Dプリントすることは不可能です。私たちが開発したものは、プリントできる他のどんなものよりもはるかに導電性が高いのです。私たちは、産業界のパートナーと協力して応用の可能性を探ることに前向きであり、研究の将来の方向性について協力者となる可能性のある人たちといつでも喜んで話をするつもりです」と述べている。
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