金属3Dプリンタのくずを再利用する新たな手法

NTTデータザムテクノロジーズ、金属3Dプリンター使用時に出るくずを約100%再利用する新たな手法を確立

NTTデータ ザムテクノロジーズは、東洋アルミニウムおよび日軽エムシーアルミと共同し、これまで産業廃棄物として処理されていた金属3Dプリンターでの製造過程で発生する金属くずを再生利用する手法を確立し、サーキュラーエコノミーを実現した。
従来手法で金属くずとして廃棄していたものを再溶解することで、廃棄物のほぼ100%が再利用可能としている。このサーキュラーエコノミーの実現により、CO2排出量を削減したモノづくりを可能とするだけでなく、廃棄にかかっていたコストも削減できるため、3Dプリンターで製造する部品の原価低減につながり、ユーザーの市場競争力を高める。

CO2排出量の削減は世界的な目標であり、環境に配慮した製造工程が必要とされている。金属3Dプリンター(金属積層造形)は、金属粉末をレーザー照射で溶融することで立体成形を行うため、照射していない粉末は再利用できる製法である。削り出しによる金属切削くずを出さないことから、その製法自体がほとんど金属くずを発生させないサーキュラーエコノミーそのものの製法だが、以下において少量の廃棄が発生していた。

  • 金属積層造形ではある規定の範囲内に収まる粒度の粉末しか利用しない。造形中にスパッタの影響で粒度が大きくなってしまう粉末材料が一部生成されるため、そのようなオーバーサイズ粉末はふるいにかけ、再利用はせず廃棄対象となる。
  • 金属積層造形では造形パーツを支えるための「サポート」と呼ばれる足場の構造も造形する。このサポート構造は造形が完了すると不要なものとなるため、全て除去し、除去したサポート材は金属くずとして廃棄対象となる。

今回、以下の3社がそれぞれの役割で協力することで、金属3Dプリンターにおける製造でこのような金属くずの廃棄を無くし、原材料を再生利用する手法を確立した。
日軽エムシーアルミ:3Dプリンター用粉末の母合金のインゴット製造
東洋アルミニウム:アトマイズ法にて、3Dプリンター用合金粉末製造
NTTデータ ザムテクノロジーズ:金属積層造形による製造と品質保証

  1. 金属積層造形用の金属粉末材料を製造するための母合金のインゴットを製造する(日軽エムシーアルミ)
  2. インゴットを用いて、アトマイズ法により金属積層造形用の金属粉末材料を製造する(東洋アルミニウム)
  3. アトマイズ法で製造された金属粉末材料のうち、規格外となったオーバーサイズ粉末は1の工程に戻る
  4. 金属粉末材料を用いて3Dプリンターで部品の製造を行う(NTTデータ ザムテクノロジーズ)
  5. レーザー照射が行われていない粉末材料のうち、規格サイズ内のものは4の工程で再利用される
  6. 5で発生した規格外のオーバーサイズ粉末および造形後に除去されたサポート材を1の工程に戻す

工程6で従来は金属くずとして廃棄していたものを、工程1に戻して再溶解することで使用原料のほぼ100%が再利用できる手法を確立した。

3社によるサーキュラーエコノミーの仕組み

今後について同社は「サーキュラーエコノミーの実現により、製造コスト面で3Dプリンターの導入に障壁があった業界にとってもメリットを創出することができました。製造コストや環境問題に対して課題意識のある幅広い業界に向けて、産業用3Dプリンターがモノづくりの当たり前の選択肢となるよう、国内市場の更なる拡大を目指していきます」と述べている。


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