LLNLが3Dプリント技術を活用した核融合エネルギー実現への新たな一歩を踏み出す
米国エネルギー省が所有する国立研究所であるローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)は、3Dプリント技術を活用し、レーザー核融合実験施設の国立点火施設(NIF)で、核融合点火に成功した。この画期的な実験は、核兵器の安全性確保を目的として実施されたものだが、同時にほぼ無限かつ安全で、炭素を排出しない核融合エネルギーへの希望をもたらした。
ターゲット室の断面図 : Eric Smith
現在、NIFで使われている点火ターゲットは、空洞ダイヤモンド製のほぼ完璧な球体で、その中に重水素と三重水素(DT)の核融合燃料が封入されており、金属円筒(ホールラウム)に固定してレーザーを照射すると核融合反応が起こる。このターゲットを作るには数カ月を要するが、将来の核融合発電所では1日に約100万個のターゲットを使い、1秒間に10回の点火を行うため、大量生産が可能な新しい製造方法が求められている。
LLNLでは、この課題に応えるため、3Dプリント技術を使ったターゲット製造に取り組んでいる。このプロジェクトでは、燃料カプセルを完全に3Dプリントで作る技術を開発しており、設計から製造、品質評価、実験までを一貫して行うプロセスを構築。また、最新技術「二重波長二光子重合(DW-2PP)」を導入し、プリント精度を向上させ、多素材を使ったプリントも可能にしている。
ホーローカムの断面図
研究者のシャオシン・シャ氏は「DT燃料の層を現在の方法で作るには1週間ほどかかり、非常に手間がかかります。3Dプリントは、このような複雑な構造を短時間で大量に作る唯一の方法となる可能性を秘めています」と述べている。また、共同研究者のジェームズ・オークデール氏は「DW-2PPプリンターを使うことで、微細な部分まで正確にプリントできます。この技術でカプセル内部の構造や素材を細かく調整できるため、特別な設計にも柔軟に対応可能です」と説明している。
実験室で使用された3Dプリント製ターゲットカプセル
2024年には、3Dプリント技術を使ったターゲットがNIFの実験で実際に使用され、成功を収めている。この技術が核融合エネルギーの実現に直結するかは今後の研究次第だが、NIFの実験を通じて核兵器の安全性を高めるためのデータも得られている。
LLNLのNIF部門を率いるジェフ・ウィソフ氏は「核融合の成功は、米国の競争力を高めるためにも重要です。核融合点火という歴史的な成果を基に、技術と科学への投資を進めることが必要です」と話している。
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