厳しい気候に対応した3Dプリント製パビリオン

HASSELLとNagami、過酷な気候に対応する3Dプリント製パブリックパビリオンを開発

欧州やアジアに複数のオフィスを構える国際的な建築設計事務所 HASSELL は、社会的および環境的課題に対処するクリエイティブ集団 to.org および3Dプリント技術を用いたデザインを多数手掛けるスタジオ Nagami と共同で、リサイクルプラスチックで作られた3Dプリント製パブリックパビリオンのプロトタイプを開発。
この構造物は、無尽蔵の建設資材としてのプラスチックごみにスポットライトを当て、プラスチックごみの世界的な課題に向き合うための前例として造られる。

All image : HASSELL

HASSELは、イヌイットの人々が季節の変わり目に使う1部屋だけの住居であるカルマクやイグルーを参考に、この3Dプリント製パブリックパビリオンを開発。
厳しい環境に対し持続可能かつ適応的に対応するパビリオンの外装には大きなフィンが設けられおり、寒冷地では外皮に雪を取り込み、イグルーの断熱構造と同じように自然な断熱材として機能させることができる。

寒冷地では密閉され、雪を利用して断熱性を高める

また、真逆となる暑い地域では、重なり合ったフィンが自然な遮光となり、自然空調、自然換気、ウォーター・ハーベスティングを促し、天窓や開口部を設けることで自然環境とのつながりを強化し、状況に応じて自然光や風を取り込むことができるような構造となっている。

イヌイットのシェルターから着想を得た3Dプリント製パブリックパビリオンは、24個に分けられた3Dプリントパーツから構成されており、遊牧民の住居のように持ち運びが可能で、現地で簡単に組み立てることができ、教育や集合場所など様々な用途に応じて機能させることができる。

パビリオンは簡単に輸送と組立てができる

高度な計算技術を駆使して設計されたパビリオンの製造には3Dプリンタのみを使用しているため、現場の気候条件などに合わせ、追加費用なしでカスタマイズすることができるようになる。3Dプリントは、従来の製造方法と比較して幾何学的な自由度が高く、最小限のエネルギーで稼働し、グリッドから切り離すように形作ることができるため、3Dプリントの限界を押し上げると同時に、本格的な機能的建築物としての形を実現している。

パビリオンは再生プラスチックから3Dプリントされている

アディティブ・マニュファクチャリングのスペシャリストであるNagamiの創設者Manuel Jimenez Garcia氏はこのプロジェクトに関して「地球上には、50億トン以上のプラスチックゴミがあります。 3Dプリントが建築や建設にまで拡大するにつれて、再生プラスチックの需要が大幅に増加し、海や埋め立て地の浄化プロセスがスピードアップする可能性があります。このプロジェクトが、新世代の建築家に刺激を与え、エコイノベーションによって推進される建築の根本的な変化が可能であると信じられるようになることを願っています」と述べている。


関連記事

3DP id.arts の最新投稿をお届けする「Newsletter 3DP id.arts」への登録はこちら

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でid.artsをフォローしよう!

     

ページ上部へ戻る