骨を修復する手持ち型3Dプリンター

骨の欠損部位をその場で修復、手術室で活用できる手持ち型3Dプリンター

韓国の高麗大学を中心に、MITソウル大学ハーバード大学関連病院などが参加する国際研究チームは、グルーガンのように操作し、骨に似た生分解性素材を直接出力して骨の欠損をその場で修復できる手持ち型3Dプリンターを開発。ウサギを用いた実験では治癒効果が従来法を上回り、今後は人間の手術応用も視野に入っている。

このデバイスは、生体適合性のあるポリカプロラクトン(PCL)とハイドロキシアパタイト(HA)の複合素材を、グルーガンのように操作しながら骨折部位に直接出力することができる。PCLは低温で溶けるプラスチックで安全性が高く、HAは骨の主要成分を模した合成ミネラルで骨の再生を促すため、両者を調整することで、強度・柔軟性・分解速度を患者ごとに最適化できる。
さらに、抗生物質を混合した材料を使うことで、術後感染リスクを低減できる点も大きな特徴であり、ウサギを用いた実験では大腿骨欠損を12週間で修復し、従来の骨セメントよりも優れた治癒効果を示した。

従来の骨移植や3Dプリントインプラントは手術前に作製されるため、複雑な骨折形状への対応に限界があった。しかし本技術は、手術室でリアルタイムに骨の欠損形状に合わせて造形できるため、より精密で患者ごとに最適化された治療が可能になる。
研究チームは「このアプローチは骨欠損治療の常識を根本的に変える可能性がある」と述べているが、臨床応用にはデバイスの標準化や滅菌方法の確立、規制当局の承認といった課題が残されている。今後は大型動物での試験を経て、人間への臨床試験が視野に入っている。
将来的には、整形外科や外傷外科、さらには野戦病院などでも活用され、迅速で個別化された骨修復が可能になることが期待される。


関連記事

3DP id.arts の最新投稿をお届けするニュースレターへの登録はこちら

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でid.artsをフォローしよう!

     

ページ上部へ戻る