PETとPETGは何が違う?材料選びの新常識

似ているようで実は違う、PETとPETGから知る3Dプリンター材料の選び方

世界では年間およそ5,000億本、1分間に約100万本ものPET飲料ボトルが生産されている。これほど身近なPETだが、3Dプリンター用フィラメントとして見かける機会は意外に少ない。一方、その仲間であるPETGは定番の3Dプリンター材料として消費されているが、両者を分ける「G」は、いったい何を変えているのだろうか。

身近なPET、でも3Dプリンターでは少数派

PETは「ポリエチレンテレフタレート」と呼ばれる樹脂で、ペットボトルや食品容器、衣料用繊維など、日常生活のあらゆる場面で使われている。世界で年間約5,000億本ものPET飲料ボトルが生産されていることからも、その普及規模の大きさが分かる。
ところが3Dプリンター材料の世界に目を向けると、状況は少し違う。フィラメントとして純粋なPETを販売するメーカーは少なく、一般ユーザーが目にする機会も多くない。代わって広く普及しているのが、同じポリエステル系樹脂に属する「PETG」である。
PETGは価格を抑えやすく入手性も高いうえ、比較的造形しやすい。そのため、PLAより高い耐熱性や機械強度が欲しいものの、より高価で扱いの難しいエンジニアリングプラスチックまでは必要ないという用途で選ばれやすく、3Dプリンター材料の中では、性能と価格、造形性のバランスに優れた中間クラスの材料といえる。

PETとPETG、その違いは「G」にある

PETとPETGはまったく別の樹脂ではなく、同じポリマー系統に属する近い材料である。PETGの「G」は「Glycol-modified」、つまりグリコール変性を意味し、PETの分子構造の一部をグリコール系成分によって変化させることで、PETが持つ性質を3Dプリントでも扱いやすい方向へ調整している。
大きな違いのひとつが「結晶化」である。
PETは冷却条件によって分子が規則正しく並ぶ結晶構造を形成しやすく、結晶化を適切に制御できれば剛性や耐熱性などを高められるが、3Dプリンターでは冷却中の収縮や変形につながりやすく、造形条件の管理が難しくなる場合がある。
一方、PETGではグリコール変性によって分子が規則的に並びにくくなり、結晶化が抑えられる。その結果、冷却時の収縮や反りが比較的小さくなり、FDM/FFF方式の3Dプリンターでも安定して造形しやすくなる。
つまり、同じPET系材料でも、この「G」の存在が3Dプリンターでの扱いやすさを大きく変えているのである。

なぜPETフィラメントはあまり見かけない?

PET自体が3Dプリントに使えないわけではない。しかし、PETGほど一般的ではないため、フィラメント製品の選択肢や造形条件に関する情報も少ない。PETの造形温度やベッド温度、冷却方法などを調べても、メーカーや使用条件によって推奨値に幅があり、情報が一致しないケースも見られる。これはPETそのものの特性に加え、市販されているPETフィラメントの種類がPETGほど多くないことも関係している。
一方PETGは、多くの材料メーカーからフィラメントが販売され、対応する3Dプリンターやスライサーにも標準プロファイルが用意されるようになった。材料そのものの扱いやすさに加えて、製品の入手性と蓄積された造形ノウハウの多さも、PETGが広く普及した理由のひとつである。

「硬さ」を活かせるPET、「粘り」と扱いやすさのPETG

PETはグレードや結晶化状態によって、高い剛性や寸法安定性、耐熱性を発揮できるが、PETGはPETより結晶化しにくく、粘りと耐衝撃性を持たせやすい。強い力を受けた際にも突然割れるより、ある程度変形しながら力を逃がしやすい材料であるため、単純に「PETよりPETGの方が高性能」という関係ではない。
造形のしやすさや耐衝撃性を重視するならPETG、材料設計や結晶化、強化材などを活用して剛性や耐熱性を狙うならPETというように、求める性能によって適した材料は変わる。
ただし、最終的な性能はPET/PETGという名称だけでは決まらない。添加剤、カーボンファイバーなどの強化材、造形温度、積層方向、インフィル率などによっても、完成品の強度や耐熱性は大きく変化する。

PETGが透明材料に向いている理由

PETGには透明度の高い3Dプリンター材料が多いが、これはグリコール変性によって結晶化が抑えられ、光を散乱させる結晶構造が形成されにくいためである。そのため透明カバー、照明部品、ディスプレイモデルなど、光を活かした造形にも適している。
ただし、FDM方式では積層された層と層の境界で光が乱反射するため、透明フィラメントを使っただけでガラスのような透明度になるわけではなく、積層ピッチ、ノズル径、造形方向、押出量などを調整することで透明感を高めることができる。

PLAの次に選びやすい実用材料「PETG」

PETGはPLAより粘りがあり、衝撃を受けても割れにくい。またABSなどと比較して造形時の収縮が小さく、反りを抑えやすいため、ケース、ブラケット、治具、機械部品など実際に使用するパーツの製作に向いている。
「PLAでは強度が少し足りない」「ABSほど造形環境をシビアにしたくない」という場合にも選びやすく、現在では代表的な3Dプリンター材料のひとつとなっており、意匠性重視のモデルから実用品までカバーできる守備範囲の広さが最大の魅力といえる。

PETGは吸湿と糸引きに注意

扱いやすいPETGにも弱点はある。その代表的なのが吸湿だ。フィラメントが空気中の水分を吸収した状態で加熱すると、ノズル内部で水分が蒸気となり、押し出された樹脂に気泡や表面荒れが発生する場合がある。また、糸引きや押出状態の不安定化につながることもあるため、開封後は密閉して保管し、状態によっては造形前に乾燥させることが重要だ。
さらに、PETGは粘りが強いため、ノズル移動時に細い糸が残る「ストリング」が発生しやすいが、リトラクション、ノズル温度、移動速度などを調整することで改善できる。

用途で選ぶ、3DFS id.artsおすすめPET/PETG材料

製品によって透明性、耐薬品性、ESD性能、カーボン配合など特性は大きく異なる。同じPETGだから同じ性能と考えるのではなく、「何を作るのか」を基準に製品を選ぶことが重要である。

EasyFil ePETG|迷ったらまずコレ、扱いやすい定番PETG

EasyFil ePETG」は、一般的な3Dプリンターから高速造形機まで幅広く使えるスタンダードPETGで、優れた層間接着性、高い耐衝撃性・耐薬品性、低い反り特性を備えており、初めてPETGを使用する場合にも選びやすい。

おすすめ用途:一般造形/実用品/大型造形/PETG入門
商品ページ:https://3dfs.idarts.co.jp/items/144248273

ReForm rPET|再生原料を活かしたPET系材料

ReForm rPET」は、PET系廃材を再利用して製造されたリサイクルタイプの3Dプリンター材料。資源を再利用しながら、実用的な造形性能を確保している点が特徴で、試作品や一般部品だけでなく、環境負荷や資源循環を意識したプロジェクトにも適している。
PETは世界的に回収・再資源化の仕組みが整ったプラスチックのひとつであり、3Dプリンター材料でもリサイクルPETを活用する動きが広がっている。

おすすめ用途:試作品/一般部品/環境配慮型プロジェクト
商品ページ:https://3dfs.idarts.co.jp/items/55645691

ESD PETG|電子機器を静電気から守る

ESD PETG」は、PETGをベースに静電気対策機能を持たせた特殊な3Dプリンター材料で、静電気によって影響を受ける可能性がある電子部品を扱う治具やケースなどに適しており、一般的なPETGとは異なる専門用途に対応できる。

おすすめ用途:電子部品用治具/電子機器ケース/ESD対策部品
商品ページ:https://3dfs.idarts.co.jp/items/78405771

3DXSTAT EMI-PETG|電磁波シールドまで3Dプリント

PETGに電磁波シールド機能を付与した特殊フィラメントである「3DXSTAT EMI-PETG」は、電子機器の筐体や通信関連部品など、一般的なPETGでは対応できない高度な用途に向けた3Dプリンター材料で、試作だけでなく機能検証にも活用できる。

おすすめ用途:EMIシールド/電子機器筐体/通信・研究開発
商品ページ:https://3dfs.idarts.co.jp/items/92220899

CarbonFil CF03|カーボン調の外観と機能性を両立

PETG系材料にカーボンファイバーを配合した「CarbonFil CF03」は、カーボン特有の落ち着いた質感に加え、積層痕が目立ちにくい表面を得やすい点も特徴。機械特性だけでなく、完成品の外観にもこだわりたい造形に適している。

おすすめ用途:精密造形/外観部品/プロトタイプ/展示モデル
商品ページ:https://3dfs.idarts.co.jp/items/118008788

PET-G CF|より高い機械特性を求めるなら

PET-G CF」は、PETGにカーボンファイバーを配合することで機械特性を高めた3Dプリンター材料で、通常のPETGが持つ低収縮性や扱いやすさを活かしながら、より高い剛性や寸法安定性を求める治具、機械部品、工業用途などに適している。

おすすめ用途:治具/機械部品/耐衝撃部品/工業用途
商品ページ:https://3dfs.idarts.co.jp/items/58285098

PET/PETGは「何を作るか」で選ぶ

PETとPETGは同じ系統の樹脂だが、分子構造の違いによって3Dプリンターでの扱い方や完成品の性質が変わる。
PETGの強みは、低収縮、耐衝撃性、層間接着性、透明性などをバランスよく備え、比較的扱いやすいことにある。一方、PETは結晶化や強化材を活用することで、剛性や耐熱性、寸法安定性など特定の性能を高められる可能性を持つ。
さらに現在では、日常的な造形に適したPETGだけでなく、透明、リサイクル、ESD対策、EMIシールド、カーボン強化など、多彩な3Dプリンター材料が登場している。「PETかPETGか」だけで判断するのではなく、作りたいものに必要な性能から材料を選ぶこと。それが、3Dプリンターを単なる試作用途から、より実用的なものづくりへ発展させる重要なポイントなのである。


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