3Dプリント人工卵で26羽のヒナを孵化させる

3Dプリント技術で卵の構造を再現し、26羽の健康なヒナの孵化に成功

遺伝子工学や絶滅種復活を掲げる米国のバイオサイエンス企業 Colossal Biosciences は、絶滅種復活や鳥類保全への応用を目的に、3Dプリンターで作製した人工卵システムを開発し、26羽の健康なヒナの孵化に成功した。

人工卵の中心となるのは、楕円形の格子構造を持つ3Dプリント製の外殻で、その内側には半透過性のシリコーン系膜が設けられており、自然の卵殻と同じように酸素を通し、水分を保ち、外部からの汚染を防ぐ役割を担う。また、上部には透明な窓があり、研究者は胚の成長を壊さずに観察できる。
実験では、産卵後24〜48時間以内の卵の中身を人工卵へ移し、胚の成長を継続させた。自然の卵殻はカルシウムを供給する働きもあるため、Colossalはその不足を補う目的で粉砕したカルシウムも加えたとされる。つまり今回の成果は、「卵の形をまねた容器」ではなく、呼吸、水分保持、観察性、栄養補助といった複数の機能を組み合わせた孵化システムである点に価値がある。

この技術が重要視される理由は、鳥類の絶滅種復活研究にある。哺乳類の場合、近縁種の代理母を使う構想が考えられるが、鳥類では卵の大きさや発生環境が大きな課題になる。特にColossalが対象とする南島ジャイアントモアのような大型鳥類では、現存する鳥の卵や体内環境だけでは対応が難しいが、3Dプリント技術なら、種ごとの卵の大きさや形状に合わせて人工卵を設計できる可能性がある。
一方で、この成果を「絶滅種がすぐに復活する技術」と見るのは早計である。AP通信やThe Guardianは、人工卵は完全な卵そのものではなく人工卵殻に近い存在であり、査読済みデータの不足や、絶滅種復活そのものへの科学的・倫理的な疑問を指摘。将来生まれる個体も、厳密には過去の種そのものではなく、遺伝子編集で近づけた生物になる可能性が高い。

それでも、3Dプリンターを活用したこの人工卵システムは、絶滅種復活だけでなく、希少鳥類の保全、胚発生の観察、遺伝子研究、繁殖補助技術などに応用できる可能性を持つ。今回の26羽の孵化成功は、3Dプリンターが単にモノを作る機械ではなく、生物の成長環境まで設計する技術へ進化していることを示す出来事である。


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