- 2025-6-24
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スタンフォード大学が3Dプリンタで再現可能な血管設計アルゴリズムを開発
スタンフォード大学の研究チームは、人工臓器の3Dプリンティングにおける最大の課題のひとつである複雑な血管ネットワークを設計し、3Dプリントする革新的なアルゴリズムを開発した。この新技術は、AIを用いて複雑な血管構造を高速に設計し、3Dプリンターで出力できるよう変換するものである。
3Dバイオプリンタでプリントされた血管網の模型
心臓や腎臓などの臓器では、細かく張り巡らされた血管が酸素や栄養を届ける重要な役割を果たしているが、これまでの技術では血管を正確に再現することが難しく、人工臓器の実用化を妨げてきた。スタンフォード大学が開発したこのアルゴリズムは、コンピュータ上で人間の血管のような複雑な構造を高速で生成し、それを3Dプリント用データに変換できるのが特長だ。研究チームによれば、このアルゴリズムを用いることで、従来の200倍の速さで心臓全体を血管化するモデルをわずか5時間で完成させることができるという。また、設計段階で流体力学シミュレーションを組み込み、血流の偏りや構造上の無理を回避し、血管が互いに衝突しないよう調整された閉ループ構造が保たれる。
血管内腔を有する3Dバイオプリント軟組織スキャフォールド
研究チームはこの技術をもとに、500本の血管分岐を持つ構造を3Dプリンターで出力。さらに、ヒトの腎臓細胞を含んだ人工組織リングにこれを組み込み、栄養液を流す実験で、細胞が生存可能な状態を保てることを証明した。ただし現時点では、出力された血管は筋肉や内皮細胞を持たない「構造体」に過ぎず、生体としての完全な機能は持っていない。
今後の課題は、3Dプリンターの精度向上や、生きた細胞を使ったさらなる構造の複雑化である。また、直接プリントが困難な極小血管をどう再現するか、必要な細胞数をどう大量培養するかといった問題も残るが、今回の成果は人工臓器開発のロードマップにおいて重要な意味を示している。
3Dプリントされた微小血管構造
同技術は、オープンソースプロジェクト「SimVascular」上で誰でも利用可能となっており、研究者や医療関係者による活用が期待されている。
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