3Dバイオプリンティング技術が機能的な心臓組織を生成

ゴールウェイ大学、細胞の力で形を変える心臓組織の3Dバイオプリンティングに成功

アイルランドの国立大学ゴールウェイ大学の研究チームは、細胞が生み出す力によって形状を変化させる心臓組織の3Dバイオプリンティング技術を開発した。この研究成果は、機能的なバイオプリント臓器の生成に一歩近づくものであり、疾病モデルの構築、創薬スクリーニング、再生医療など幅広い応用が期待されている。

形状を変化させる4Dバイオプリンティング技術

従来の3Dバイオプリンティング技術は、心臓のような臓器の最終的な解剖学的形状を直接再現することに重点を置いていた。しかし、実際の生体発生過程では、心臓は単純な管状構造から複雑な四室構造へと形を変えながら発達する。この形態変化は、細胞の成熟と機能向上に重要な役割を果たす。
今回の研究では、この動的な形状変化の重要性に着目し、埋め込み型バイオプリンティング技術を活用することで、細胞の力でプログラム可能かつ予測可能な4D形態変化を実現した。この手法により、バイオプリントされた心臓組織の構造的・機能的成熟度が向上することが確認された。

ハイドロゲル内での形状変化組織の4Dバイオプリンティング

バイオインクの特性が形態変化を制御

本技術では、生体適合性のある特殊なバイオインクを使用し、細胞が成長しながら形を変える環境を提供する。研究チームは、初期のプリント形状やバイオインクの硬さを調整することで、組織の形状変化の度合いを制御できることを発見。この形態変化が細胞の配向を整え、収縮能力を強化することも明らかになった。
研究チームは、形状変化を取り入れることで、バイオプリント心臓組織の拍動がより強く、速くなることを確認。バイオプリントされた組織の成熟度の低さは長年の課題であったが、この技術によって、実験室内でより成人の心臓組織に近い特性を持つ組織の作製が可能になる。

バイオインクの組成と細胞表現型による4D形状モーフィングの調整

本研究の主導者であるアンドリュー・デイリー准教授は「今回の成果は、発生過程に着想を得た新しいバイオプリンティング技術の可能性を示すものです。我々はまだ実際に移植可能な心臓組織の作製には至っていないが、大規模なヒト心臓モデルへの応用に向けて研究を進めています」と述べている。
今後の課題として、大型の組織を生存させるための血管ネットワークの統合が挙げられるが、この新技術の開発により、心血管医療への応用が現実のものとなる日が一歩近づいたと言える。3Dバイオプリンティング技術がさらに進化し、機能的な人工臓器の実現へとつながることが期待される。

研究の全文:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.202414559#adfm202414559-bib-0004


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