3Dプリント銃による大手保険会社CEO射殺事件

大手医療保険会社CEO射殺事件が3Dプリント技術と違法銃器製造に関する新たな議論を呼び起こす

米国の保険会社大手ユナイテッドヘルスケアのCEOブライアン・トンプソン氏殺害で逮捕起訴されたルイジ・マンジオーネ容疑者は逮捕時、3Dプリンタで製造した「ゴーストガン(非正規製造銃)」とサプレッサーを用いて犯行に及んだと報道されており、この一件が3Dプリント技術と違法銃器製造に関する新たな議論を呼び起こしている。

防犯カメラが捉えた殺害時の映像

今回の事件では、実際の作動不良やサプレッサー装着による銃圧力変化に対する対策が施されていた可能性が指摘されている。通常、銃弾発射時のガスは即時に外部へ放出されるが、サプレッサーは内部圧力を増し、作動不良(ジャム)の要因となることがある。プロ仕様のサプレッサーはこうした問題を軽減するが、家庭用3Dプリンタで製造したパーツは十分な性能を得にくく、作動の不安定さが残ると考えられてきた。しかし、今回の殺害時ではそのような作動不良が確認されていないことから、マンジオーネ容疑者がこの欠点を補うために試行錯誤を重ね克服したと考えられている。

ブライアン・トンプソン氏殺害容疑で逮捕されたルイジ・マンジオーネ

かつて、日本国内でも逮捕者が出た3Dプリント銃は、精度や信頼性に欠け、合法・非合法を問わず、市販・密売される従来型火器に劣ると考えられていたが、近年、設計データや素材の改良、コミュニティ内での情報共有により、静音性や実用性を一定水準まで引き上げる事例が数多く見られ始めている。インターネット上には3Dプリント可能な拳銃やサプレッサーの設計ファイル、組立ガイドが横行し、一部コミュニティでは材料選択や耐久性、コスト削減策までがユーザー間で議論され、性能が向上し続けている。

警察関係者が犯行に使われたと公開した3Dプリント銃

3Dプリント業界は、こうした技術悪用をどう抑止するかが問われているなか、業界団体やメーカー、プラットフォーム運営者は違法利用防止のガイドライン策定、ファイル流通の監視強化、教育的アプローチなど、具体的な対応の必要性に直面している。もし3Dプリント技術に関する規制強化や新たな立法措置が実施されれば、3Dプリンタメーカーやファイル共有サービスにまで広くその影響を及ぼす可能性がある。
3Dプリント技術がもたらす革新性と利便性の陰で、社会は今、深刻な課題に直面している。今回の事件はその一例であり、3Dプリント銃が、暗殺などの凶悪犯罪へ転用される現実を示したといえる。また、近い将来、別の人物が同様の行為に及ぶのは時間の問題と思われ、法規制やモラルを巡る議論がこれまで以上に活発化することは確実である。


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