医療イノベーションの新境地:精密3Dプリンティング技術が切り開く未来
米国の公立大学ノースカロライナ大学(UNC)は、医療の最前線で革新を追求し、マイクロスケールの3Dプリンティング技術を駆使して最先端の医療ソリューションを開発している。バイオメディカル工学共同部門のRoger Narayan教授率いるチームは、超精密なマイクロ3Dプリンティング技術を開発・提供する BMF の「microArch® S130(光学解像度2 μm)」を用いて、pHセンサーや組織間液(ISF)抽出装置、5-HTセンサーといった多岐にわたる研究課題に取り組んでいる。これらの応用では、精密な解像度と正確さが要求され、従来の製造方法では達成不可能だった高度な精度が実現されている。
先進的なpHセンシング技術:マイクロニードルベースの比色センサーパッチ
生物学的プロセスにおいて、pH値は栄養状態や創傷治癒、さらには化学反応にも影響を与える重要な指標である。特に食品産業や医療分野では、肉の腐敗検出や創傷の健康状態を監視するための低コスト光学pHセンサーの開発が求められている。こうしたニーズに応え、Narayan教授のチームは、機械学習を活用したマイクロニードルベースの比色pHセンサーパッチを開発した。この革新的なパッチは、食品品質の監視と創傷ケアの評価において優れた性能を発揮しており、in vitro実験でもその効果が確認されている。BMFの高精度3Dプリント技術を活用したことで、センサーの製造精度が飛躍的に向上し、多様な構造やサイズに応じたマイクロニードルのカスタマイズが可能となった。この多用途で費用対効果の高いpHセンシングパッチは、食品安全と医療分野に大きな変革をもたらすと期待されている。
マイクロニードル・ベースの比色pHセンシング・パッチの製造工程の説明図
ISF採取を革新するマイクロニードルアレイデバイス
UNCの研究チームは、組織間液(ISF)を効果的に採取・監視するためのマイクロニードルアレイデバイスを開発した。従来のISF採取方法には、拡散、真空対流、毛細管現象、浸透、中空マイクロニードル(MN)アレイなどがあるが、真空駆動システムは操作が難しく、組織の水分変動に敏感であるという課題があった。Narayan教授のチームは、これらの課題を解決するため、圧力駆動の対流方式を採用したポイント・オブ・ケア用マイクロスケールデバイスを開発した。BMFの3Dプリント技術を活用することで、高さ500 μmから1.4 mmまでのマイクロニードルを製造し、皮膚の貫通効率を大幅に向上させることに成功した。このデバイスは、臨床環境でのISF採取と分析の精度と容易さを飛躍的に高め、ポイント・オブ・ケアアプリケーションにおいて新たな可能性を提供している。
a)正方形プレートとb)キャップ上のMNアレイの光学像。c) MNアレイ、d) MN先端部、e) MN斜視図のSEM顕微鏡写真。キーエンスレーザー走査型光学顕微鏡によるf) MNの3D画像、およびg) 高さ(y軸)と針の幅(x軸)のプロットで示したMNの寸法。高さh)750μm、i)800μm、j)900μm、k)950μmのMNアレイを用いた、トリパンブルーコートした豚皮膚穿刺の光学像。
5-HTセンシングのためのカーボンファイバー統合型多接触電極
従来の分析物検出法では、直径10μmの炭素繊維が用いられていたが、小型化に伴い、電極相互接続や組み立てプロセスに限界があった。これに対し、UNCの研究チームは、5-HT(セロトニン)センシング専用のカーボンファイバー統合型多接点電極(MCCFE)を開発した。MCCFEは、柔軟で高密度な構成を持ち、従来の設計制約を克服している。多数の電気活性部位を持つこの電極は、優れた引張強度と化学的安定性を備え、効果的な電気化学センサーとして機能する。さらに、超音波処理によるキャビテーション現象により、電解質の浸透などの電極性能が向上した。MCCFEの開発は、電気化学センサー技術において大きな進展を示しており、より正確で信頼性の高い分析物検出が可能となり、医療および科学分野での応用が拡大することが期待されている。
模式図:(A)CADモデル(a-c)と3Dパターンアレイのデジタル画像(d-f)。(B)3Dアレイ(a-d)の柔軟性と曲げやすさの評価。(C)パラジウムの担持と紡績炭素繊維のバイオセンシング電極への変換(a-e)。
このように、精密3Dプリンティング技術を駆使したUNCの研究は、医療分野における革新の新たな扉を開き、医療技術の未来を形作っている。これらの先進的な医療ソリューションの実現には、BMF社の高精度3Dプリント技術が欠かせず、その卓越した技術力が医療イノベーションの推進に大きく貢献している。
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