3Dプリント建築模型の実例を元に模型製作の課題を上げてみました

3Dプリンティング建築模型事例紹介 5

1/50スケール模型を参考に課題を取り上げてみる。

これまでに度々事例を紹介してきた3Dプリンティング建築模型について(過去記事はこちら)、これまでの経験で得たことや今後の課題等を取り上げてみました。

製品のデザイン開発や、コンテンツディレクションを主とするid.artsですが、長年に渡り建築関係とも深いご縁があり、大手建設・建築メーカーや建材メーカーなど、複数の関連企業に対しコンテンツディレクション等を担当しています。
下図のような高精度3DCG製作(主にカタログや広告に利用する画像として制作)はもちろん、レンダリング用に構築した3Dデータの二次利用、三次利用のためのツールとして、VRシステムの開発など
10数年前から3Dデータを軸とした複合的な展開を研究し、実行しています。数年前より実施する建築模型3Dプリンティングは、このデータ流用の流れの中に必然的に加わった形です。

3DCG画像

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今回ご紹介する建築物の外観CG

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昨今の3Dプリンタブームにより、「3Dプリンタなら、建築模型も簡単に作れるでしょ?」と言うご意見などを度々見聞きしますが、現実はかなり異なる部分と感じています。下記では、出来るだけ分かりやすい案件として、一般的な住宅模型の3Dプリント製作に関する課題を取り上げています。
石膏タイプのプリンタによるフルカラー模型の製作もありますが、石膏タイプの3Dプリントは大型で精度を要求される物が不得意なため、ほとんどの場合FDM方式による3Dプリントを実施しています。こちらの事例で紹介するのも、このタイプになります。

建築CADデータからの展開

大手建築メーカー様などからのご依頼で広告やカタログ利用する3DCG画像を制作する場合、もっとも重要なのは「リアル」な絵作りです。
実商品(実際の建築物)の有無に関わらず、提供される資料(図面等)にはかなりの格差があり、高精度な意匠図面の場合もあれば、ラフスケッチだけを提供される場合もあります。私共は、どんなレベルの資料を提供された場合でも、超フォトリアルな建築3DCGの製作が可能です。
これには、建築に関する基礎知識と、図面やスケッチ等の資料を読み解く力が重要です。
3Dプリンタで建築模型を造形する場合にもこの部分の能力が重要と考えています。
id.artsでは、精度の高い建築模型を製作する上での注意点として、以下の部分に配慮しています。

  1. 造形を行う3Dプリンタの特性(造形面積や精度、材料など)
  2. 造形精度や耐久性(対衝撃や展示中の劣化等)を考慮した肉厚調整
  3. 肉厚調整に伴う各部位の収まり
  4. 造形後の作業を考慮した部位のプリント方法(分割方法や研磨面積への配慮等)
  5. 仕上げ行程
  6. その他、造形時間や材料コストなど

精度を要求されない簡易的な模型では配慮不要な部分も多いですが、精度を要求される建築模型3Dプリンティングでは、この部分を重要視しています。逆を言えば、上記への配慮等が不要な模型であれば、スチレンボードで作れてしまうでしょう。
弊社では、時間&コスト面から「スチレンボードで製作した方が良い」模型についてはそちらをお勧めし、3Dプリントをお断りするケースもございます。

下図はこちらで紹介した3Dプリント模型の3DCG用データです。
このまま3Dプリントできるデータが用意できれば良いですが、実際には上記したような項目への配慮を行い、各部位のモデリング調整を実施します。

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例えば、この建物の特徴である屋上手摺や外階段等を3Dプリントで再現するため、以下のような点に配慮し、モデリングを実施しています。

  • 造形時間が短縮出来て、エラーが出ずらいサイズ、積層方向
  • 展示中に触れても壊れないサイズ、積層方向など

上図モデルデータを元にレンダリングした3DCGイメージ

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上の3DCG画像用データを再構成し、プリントした模型(1/50スケール)
アクリルケースなどは専用サイズでオーダー

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このような部分にほんの少し気を配るだけで、3Dプリント後の破損や劣化も軽減可能です。
数か月で破損してしまうスチレンボード模型とは異なり、キチンと造形すれば経年劣化を抑えることができるのも3Dプリント建築模型のメリットの一つでしょう。

今回ご紹介した例は、数ある事例の一つです。
例えば、こちらのように大型の建築部や、スチレンボードで再現が困難な有機的形状など、条件によって課題点は様々です。何れの場合でも3Dと3Dプリンタに関する経験と知識が重要ですね。

arc2-1

JWのようなCADが足かせとなっているのか、BIM等を活用する大規模な建設を除けば、建築CADの3次元化はまだまだですね。そもそも住宅設計に3次元は必要無い!と言う設計士もいらっしゃいますが、私共のように2次元から3次元展開が得意な者にとっても、中御半端な3DCADデータはかえって必要ありませんw

今回ご紹介したのは、あくまで弊社の取組み内容に対する事案の一つです。
今後、より大型の3Dプリント模型や、有機的で複雑な3Dプリント模型等についてもご紹介いたします。

 

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