- 2025-2-6
- 最新情報
- 3D bioprinting, 3DPrinting, 3Dプリンティング, Medical, Ultimaker, センサー, テクノロジー, 医療
糖を燃料に自ら分解する革新的3Dプリント生分解性菌電池
最先端の材料と技術の研究を行う Empa(スイス連邦材料科学研究所)のセルロース・木材材料研究所の研究者らは、従来の電池とは一線を画す新たなエコ電池として、3Dプリント技術を応用した生分解性菌電池を開発した。今回の研究成果は、従来のリチウムイオン電池などに比べて環境負荷が極めて低く、持続可能なエネルギー供給システムとして注目されている。
白色腐朽菌は電子を捕獲し細胞外に排出する
本技術は、微生物燃料電池としての性質を有し、厳密には「電池」ではなく、糖などの栄養素をエネルギーに変換するシステムである。具体的には、アノード側においては酵母菌が代謝活動により電子を放出し、カソード側ではホワイトロット菌が特定の酵素を生成することにより、放出された電子を捕捉・伝導する仕組みで構成されている。
この革新的な菌電池は、分解性セルロースを主成分とする3Dプリント用インクに、2種類の菌細胞をあらかじめ混合した状態で形成される。3Dプリント技術の利点として、菌細胞を損なうことなく精密にインクを押し出すことが可能であり、結果として、適度な電気伝導性を維持しながら、生体材料由来のエコな電池が実現された。
糖などの栄養素をエネルギーに変換
現在のところ、本技術は小型センサーなどの低消費電力機器への電力供給を想定しており、数日間の運転が可能で、例えば、温度センサーや農業・環境調査における各種モニタリング機器への応用が期待される。従来型の電池と比較して、毒性を有しない天然素材―菌や木材、綿などから得られるセルロースを用いるため、環境への影響が極めて少ないという特徴も有している。
3Dプリンタを使って真菌細胞をプリントインクに混ぜる
さらに、3Dプリント工程において用いられるインクにはセルロースが含まれており、このセルロースは菌にとって栄養源としても機能する。使用後、菌はこの栄養素を利用して自ら分解するため、製品自体が環境に自然に還る仕組みとなっている。なお、最適な栄養源としては単純糖が選ばれており、これらは既にプリント時に添加されている。ユーザーは、乾燥状態や蜜蝋(みつろう)を用いたケースに保管し、使用時に水と追加の糖分を加えることで、電池が作動し、数日間の持続的な電力供給が可能となる。
菌類電池は2種類の真菌の混合物で構成される
本研究は、3Dプリント技術と生分解性材料を融合させた先進的な取り組みとして、環境保全と持続可能な技術開発の両面において高い評価を受けており、今後、さらなる性能向上と実用化への展開が期待され、3Dプリント技術が次世代エネルギー分野に与える影響が一層注目されている。
関連記事
- 3Dバイオプリンティング技術が機能的な心臓組織を生成
- Sakuuが次世代電池の3Dプリントに成功
- 中国の研究者3Dプリント製リチウム電池を開発
- ゼラチンベースのDLPバイオプリント樹脂
- 音波を活用した3Dバイオプリント技術
3DP id.arts の最新投稿をお届けするニュースレターへの登録はこちら
最新情報をお届けします
Twitter でid.artsをフォローしよう!
Follow @idarts_jp