粘液ベースのバイオインクで肺組織を3Dプリント

粘液ベースのバイオインクで慢性肺疾患の研究と治療に役立つ可能性のある肺組織を3Dプリント

世界最大の科学協会のひとつである According to the American Chemical Society(米国化学会 以下 ACS)の研究チームは、3Dプリンティングによる肺組織の作成に、粘液ベースのバイオインクを使用することに成功した。この研究は「可視光線で架橋可能なムチン-ヒアルロン酸複合バイオインクによる3Dバイオプリンティングによる肺組織工学」と題する論文で発表された。

肺疾患を患う人の中には移植を受ける人もいるが、ドナーの臓器は十分な数が確保されていない。その代わりとして医師は薬物療法や治療で症状を管理しているが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や嚢胞性線維症のような疾患には効果的な治療法がない。研究者たちは常に優れた薬を求め、しばしば齧歯類で薬のテストを行っているが、こうした動物実験は、人間の肺疾患の複雑さには必ずしも一致せず、新薬の安全性や有効性を予測できない場合もある。

研究チームは、より優れた移植用研究モデルとして、研究室で生成可能な肺組織の作製方法のひとつとして、人間の組織を模倣した構造を3Dプリントする方法を研究してきた。しかし、細胞増殖をサポートするのに適したバイオインクを見つけるのは難しく、研究チームはこの問題の解決を目指し、バイオプリンティングではまだあまり使用されていない粘液の成分であるムチンに着目。ムチンの構造の一部は、細胞増殖を促進するタンパク質と類似しており、研究チームは、このムチンをメタクリル化ムチン(MuMA)に変えて肺細胞と混合し、結合組織に存在する天然物質であるヒアルロン酸を加えることで、バイオインクをより濃く、細胞の成長と接着に適したものにした。

このインクを用いてテストパターンをプリントした後、青色光を照射してMuMA分子を結合させ、水分を吸収し細胞の生存を助ける安定した多孔性ゲルを作り出した。
3Dプリントされた構造物は無害で体内でゆっくりと分解されるため、プリントされた足場が時間の経過とともに新しい肺組織に置き換わるインプラントとして使用できる可能性がり、このバイオインクは、肺疾患の研究や治療のテストを行うための3D肺モデルの作成にも役立つとしている。


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