斜面や曲面に施工可能な3Dプリンティング技術

大成建設と東レエンジDが斜面や曲面に施工可能な3Dプリンティング技術を開発

日本の大手総合建設会社である大成建設東レエンジニアリングDソリューションズ(以下 東レエンジD)は、斜面や曲面、凹凸面など任意の形状に沿わせてコンクリート構造物を構築できる業界初の3Dプリンティング技術を共同で開発。本技術は、トンネルインバートの施工をはじめ建物の直接基礎や擁壁、断面補修といったコンクリート工事の施工法に革新をもたらす技術で、建設工事の省人化や工期短縮を可能とし、更なる生産性向上に貢献することができるという。

大成建設は、コンクリート構造物の新たな施工法として建設用3Dプリンティング技術「T-3DP®(Taisei-3D Printing)」の開発を進めており、これまでに3Dプリンタで製作した部材によるPC構造体の構築を実現したほか、2022年には3Dプリンティング向けの環境配慮コンクリートを他社に先駆けて開発するなどの成果を上げている。しかし、従来の3Dプリンティング技術は平滑な水平面上での造形を前提としており、適用可能な構造物の形状や施工法が限定されていた。斜面や曲面での造形を実現するには、プリンタヘッドが障害物などに衝突することなく対象面の形状変化に追随して移動可能なツールパス(プリンタ経路=プリンタヘッドがたどる経路をコード化したもの)を生成する技術と、斜面や曲面でも自立し安定性に優れた3Dプリンティング用コンクリート材料を開発する必要があった。

大成建設と東レエンジDは、これらの課題を踏まえて新たなコンクリート用3Dプリンティング技術を実現。東レエンジDは、樹脂・複合材料の成形シミュレーション技術をベースとした樹脂用3Dプリンタ用シミュレーションソフト「3D TIMON®-AMSolution」をコンクリート向けに応用するとともに、今回新たに3次元形状データ処理技術を付加することで、斜面や曲面、凹凸がある場所での障害となる物や地形を自動認識し、プリンタヘッドが衝突を回避することができるツールパスの自動生成システムを新たに開発。さらに大成建設が開発した自立安定性に優れた3Dプリンティング用コンクリート材料と施工ノウハウを適用することで、これまで実現が困難であった斜面や曲面といった任意形状に対応可能な建設用3Dプリンティング技術の確立に成功し、難易度の高い施工を可能にした。

本技術の特徴

  1. 地盤や障害物への衝突を回避するツールパスを自動生成
    計測した地盤や障害物などの形状データに基づき、図形データ処理技術を活用してプリンタヘッドの衝突箇所を自動認識することで、周辺地盤などへのプリンタヘッドの衝突を回避するツールパスを自動生成。これにより、斜面や曲面などの複雑な地盤形状であっても形状変化に追従したコンクリートの積層により構造物を造形することができる。(図1参照)
  2. 斜面や曲面、凹凸がある場所でも高精度に施工可能
    自立安定性に優れた3Dプリンタ材料を用いることで、斜面や曲面、凹凸のある場所でも高精度に施工が可能。凹凸がある模擬地盤上でのプリント実証では、壁高450mmのコンクリート仕切り壁(埋設型枠)の高さ方向における施工誤差が平均4mm程度で施工できることを確認。(写真1参照)
  3. 3Dプリンタを用いた新施工法により工事の省人化や工期短縮を実現
    トンネルのインバートコンクリート工事を想定して開発した3Dプリンタを用いた新たな施工法では、仕切り壁に相当する部分を3Dプリンタで自動構築し、プリンタのレール設備を活用しレール上を移動しながら内部コンクリートを打設。本施工法によりコンクリート工事の省人化が図られ、従来の6名体制から最終的には2名への削減が可能となり、3Dプリンタでの施工自動化により工期短縮も実現。(図2参照)

図1:ツールパス生成における地盤への衝突を回避する新技術

写真1:模擬地盤上でのプリント実証

図2:3Dプリンタを活用したトンネルでのインバートコンクリートの施工手順

今後両社は、本技術を用いた施工時の品質、安全性、生産性について検証を重ね、様々な建設工事への適用に向けさらなる研究開発を進めるとしている。


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