オマーン初の3Dプリントモスク建設

3Dプリンターで築く未来のモスク。オマーン初の礼拝所が持続可能な建築技術で誕生へ

オマーン南部サラーラで、同国初となる3Dプリンター活用の礼拝所「アル=ハイル・モスク」計画が始動する。オマーン国南部に位置するドファール自治体の支援のもと建設されるモスクは、伝統的なイスラーム意匠と最新の気候適応型設計と3Dプリント技術を融合させた構造物で、建設コストを最大30%低減し、建設廃棄物60%削減するという目標を掲げている。

本計画は、海岸沿いエリアを対象とする都市開発プロジェクトである「Dahariz Waterfront Development Plan(ダハリーズ・ウォーターフロント開発)」の一環として2025年の着工を想定し、地域文化の象徴となる公共建築を3Dプリント技術で具現化する。
建築コンセプトは「スパイラル・リボン」で、統合と継続性を象徴する連続体として礼拝空間を包み込む。DfAM(付加製造最適化設計)を適用し、直方体に縛られない流線形を高精度で成形。ミナレット(イスラム教のモスクやマドラサに付属する塔)は、オマーンの帆船や乳香の香炉に着想を得た造形と、地域の意匠遺産を現代的に解釈し、中央の楕円形礼拝ホールには頂部のオクルスから自然光が降り注ぎ、静謐な祈りの場をつくる。

建設・製造分野における自動化と 3Dプリント技術の応用を専門とするオマーン発のテクノロジー企業である Innotech Oman が施工を担当。同社は、沿岸都市サラーラ特有の気候に対応するため、耐塩害・耐風性に優れた3Dプリントコンクリート技術を提供する。
3Dプリント技術による施工は、複雑な形状を正確に制御できるとともに、型枠使用を大幅に減らし、材料の使用効率を最適化するため、従来工法と比較して最大30%のコスト削減と、最大60%の建設廃棄物削減が期待される。さらに周囲には、耐塩・耐風植物を配置した緑地や日陰を生む歩行空間が設けられ、自然と調和する快適な環境が整備される予定となっている。

また、本プロジェクトは運用段階でも環境への配慮を徹底している。受動冷却や自然採光のほか、エネルギーハーベスティング技術を取り入れ、運用時のエネルギー消費を最小限に抑制。さらに、地域産資源やリサイクル素材を活用し、建設から運用までのサプライチェーン全体で持続可能性を追求する。これにより、建設段階と運用段階の双方で二酸化炭素排出を抑える「デュアル・デカーボン」建築を目指している。


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