ロンドン自然史博物館が3Dプリント技術活用

ロンドン自然史博物館が新常設展に3Dプリント陶器を採用

ロンドン自然史博物館(The Natural History Museum)は、最新の3Dプリント技術を活用した新常設ギャラリー「Fixing Our Broken Planet」を公開。再生粘土を使用した3Dプリント陶器を展示ケースに採用し、歴史的建築と持続可能性を両立する空間づくりを実現している。

ロンドン自然史博物館は、19世紀の建築家アルフレッド・ウォーターハウスが設計した、テラコッタを多用した美しい外観で知られている。テラコッタは当時、石材に比べて低コストで加工しやすく、大気汚染に強いという利点から選ばれたもので、この伝統は、2025年4月に公開された新常設ギャラリー「Fixing Our Broken Planet(壊れた地球を修復する)」にも受け継がれている。
このギャラリーは、十数年ぶりとなる同館の新たな常設展示であり、設計には館内の建築チームが参加。環境負荷を最小限に抑えながら、歴史的建築への敬意を表する空間を目指しており、設計段階では素材や製造方法の環境影響を比較検討した結果、3Dプリント技術と再生陶器が最適と判断された。

3Dプリントは、スペイン・バルセロナを拠点とする LAMÁQUINA が担当し、WASPのロボット型3Dプリントシステムと、陶器産業から排出される廃棄粘土を40%含む再生クレイ材料を使用している。3ヶ月の期間内で製作された1,686個の3Dプリント部品は、10種類のモジュールを基に組み合わされ、ギャラリー内の展示ケースやベンチの土台を形成している。中には電源ケーブルやサイン用の配線穴など、技術的な機能も含まれている。

文化財に配慮した厳格な制限のもと、建物の壁に触れず、400kgを超える荷重をかけないよう工夫された設計は、わずか10日間で設置を完了。新旧の建築技術が調和し「自然に学ぶ解決策を探る」というギャラリーのコンセプトにふさわしい展示空間を生み出している。
このプロジェクトは、粘土という自然素材と、3Dプリント技術という最新技術を結びつけた画期的な事例であり、今後の博物館展示や建築デザインの未来に新たな指針を与えるものといえる。


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