硫黄とレゴリスを用いた月面3Dプリント建設

NASAとLSU、硫黄とレゴリスを用いた月面での3Dプリント建設に向けて協力

NASA(米国航空宇宙局)とルイジアナ州立大学(LSU)は共同で、月面資源を利用した3Dプリント建設のための新たなプロジェクトを展開。2025年に予定されているNASAのアルテミス3号ミッションは、1972年以来となる有人での月面活動を目標としている。
このプロジェクトを率いるLSUの助教授で3Dプリント建設の専門家であるアリ・カゼミアン氏は、NASAの研究者マイケル・フィスケ氏とジェニファー・エドマンソン氏と共に、月面資源のレゴリス(堆積物)と硫黄を用いて3Dプリントされる無水コンクリートの開発を目指している。

月と火星のための革新的建設プロジェクト

国立科学財団(NSF)から20万198ドルの助成金を受けているプロジェクト「Planetary Robotic Construction on the Moon and Mars Using 3D Printed Waterless Concrete」は、2024年1月1日から2025年12月31日までの期間、月面資源を活用した3Dプリント建設技術の開発に焦点を当て、硫黄-レゴリスコンクリート(SRC)の開発に注力している。
月と火星におけるロボット建設で使用されるSRCは、優れた機械的強度、迅速な硬化、酸性及び塩分環境での耐久性を備えている。

3Dプリント建設会社ICONによる月面基地建設プロジェクト Photo : ICON

宇宙建設技術の新時代

LSUとNASAは、地球からの資材輸送に伴う高額なコストを考慮し、月や火星に既に存在する資材を活用することを目標に研究を進めている。これは、宇宙探査の持続可能性目標と完全に一致し、自己完結型の月面居住地や構造物の開発への道を開く可能性がある。さらに、この取り組みは、LSUとNASAマーシャル宇宙飛行センターの専門知識を結集し、学術研究と実際の宇宙応用との間のダイナミックなシナジーを生み出している。

研究室にある3Dプリンター Photo : LSU

チームを率いるアリ・カゼミアン氏の研究室の主な目的は、地球および宇宙での構造物建設方法を変革する可能性を秘めた建設技術の開発にある。この研究室は、住宅不足問題の解消や災害救助アプリケーションのために、家屋や避難所をより安価かつ迅速に建設するための3Dプリント技術の開発にも取り組んでいる。
持続可能な月面および火星居住地建設の鍵となるこの革新的なアプローチは、硫黄-レゴリスコンクリートの開発、資源利用への強いコミットメント、学際的な協力、厳格な宇宙耐性テスト、教育への焦点を通じて、地球外における貴重な資源活用のための先進的な取り組みといえる。

ICONが提案するシステムのコンセプトレンダリング

今後の課題は、この新しい建設材料の宇宙環境における耐久性と実用性の検証である。対策として、極端な温度変化、真空状態、微小隕石の衝撃など、惑星の条件を模倣した環境での徹底したテストが予定されている。この研究は、宇宙探査の未来における持続可能な建設技術の発展に不可欠な一歩となる。


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