先進シミュレーション技術により、3Dプリント導電性ポリマーの熱・電・機械特性を解析
マドリード・カルロス3世大学、インペリアル・カレッジ・ロンドン、オックスフォード大学、BCMaterialsの研究者らは、3Dプリント技術で作製される導電性ポリマー部品の熱・電・機械的特性を、材料組成、プリントパラメータ、及び外部条件など複数の要素を統合的にシミュレーションできる次世代3Dプリント導電性ポリマー設計プラットフォームを開発した。
FFF方式による3Dプリントは、微視的な構造変化を引き起こし、これが導電性や機械的強度に大きく影響する。例えば、フィラメントの積層方向や層高、インターフィラメントの接着強度が、抵抗率やひずみ感受性、ジュール加熱といった主要な特性に直結することが明らかになっている。実験では、電界に沿ってフィラメントを配置した縦向きプリント試料が、低い抵抗率と高い機械的耐性を示す一方、横向き配置では導電経路の途切れや接着不良により抵抗が増加する傾向が確認された。
異なる印刷方向によるFFFサンプルの多重物理的特性評価
本プラットフォームは、ミクロなフィラメント挙動の均質化モデルから、実際の熱膨張や機械変形、ジュール加熱などを考慮したマクロな連続体モデルまで、多段階の解析手法を組み合わせている。これにより、試作や試行錯誤の工程を大幅に削減し、3Dプリント製造前のパラメータ最適化を可能としている。実際、Direct Ink Writing(DIW)方式で用いられる電加熱型プリントカートリッジの設計最適化に成功し、電極接触部近傍の局所的な過熱を抑制しつつ、均一な温度分布によるインクの粘度制御を実現した。
導電性熱可塑性プラスチック用のin-silicoマルチスケール プラットフォーム
本技術は、3Dプリント技術を活用するエレクトロニクス部品、ウェアラブルセンサー、スマートマテリアルなどの分野において、設計段階から高精度な性能シミュレーションを可能にする。さらに、グラフェンや銀ナノワイヤなど他の導電性フィラーを組み込んだ複合材料への応用拡大も期待され、航空宇宙、医療機器、フレキシブルエレクトロニクスなど、次世代の電子・構造部材の設計に革新をもたらす可能性がある。
DIWプリンター用の3Dプリント加熱カートリッジの最適設計へのin-silicoプラットフォームの適用
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