香港科技大学、調理機能付き3Dフードプリンタを開発

香港科技大学、AIとグラフェンベースの赤外線加熱技術でプリントしながら調理できる3Dフードプリンタを開発

香港の公立大学である香港科技大学(HKUST)の研究チームは、3Dプリントと同時に食品を調理する革新的な3Dフードプリント技術を開発。「Advanced Materials」に掲載された​この技術は、食品3Dプリンティングの効率性と安全性を大幅に向上させる可能性がある。

段階的な食品3製造プロセス

従来の3Dフードプリンター、ペースト状の食品を押し出し、その後オーブンやフライヤーで調理するという二段階のプロセスを必要としているが、この調理方法は、衛生面におけるリスクや構造の不均一性が生じる可能性があった。HKUSTの研究チームが開発した新しいシステムは、人工知能(AI)とレーザー誘起グラフェン(LIG)赤外線ヒーターを活用し、各層をプリントする際に即座かつ制御された加熱を行うこで、食品の精度、効率性、安全性を向上させている。具体的には、この赤外線ヒーターは表面温度を137°Cに維持し、側面も105°C以上を保つ。​さらに、このフードプリンタの消費電力はわずか14ワットであり、従来のオーブンやフライヤーの1000~2000Wと比較しても、非常に消費電力が少ない。

でんぷんベースの生地サンプル

研究チームは、デンプンベースのクッキー生地を用いて性能を評価し、走査型電子顕微鏡(SEM)やX線イメージングで分析。​その結果、赤外線で調理されたサンプルは均一な内部構造を保持し、オーブンで焼いたものに見られる膨張や不均一な多孔性がなかった。​また、熱の浸透は表面から1~2mmに制限され、下層の過剰な加熱を防いでいることが確認された。

プリントされた生地の微生物研究

このプリントシステムは、食品の安全性でも高い評価を示しており、​赤外線処理されたサンプルは、従来の方法で調理されたものと比較して、細菌の増殖が大幅に抑制された。​100°Cで48時間後、赤外線で調理された食品には0~6の細菌コロニーしか検出されなかったのに対し、オーブン焼きやエアフライされたサンプルでは200以上のコロニーが見られた。​これは、各層がプリントされる際に即座に高温にさらされ、細菌が除去されたことを示している。

Python スクリプトを使用した食品の形状設計プロセスとワークフロー

この技術は、エネルギー効率と精度が重要視される商業用キッチンでの実用化が期待されており、​レストランやベーカリーなどの現場では、複雑なプロセスを経ずにカスタマイズされた食品を提供することが可能となる。​また、厳格なポーション管理や成分の正確性が求められる医療現場でも、特殊な食事の提供に信頼性の高いソリューションを提供できることが期待される。
現在、この3Dプリンティング技術は研究段階にあるが、精密な構造と制御された加熱を単一の工程で実現するユニークなアプローチであり、商業用および特殊な食品生産の両方において、より実用的な代替手段を提供する可能性がある。

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