3Dプリント製品の火災リスク低減に挑む革新的ナノ技術プロジェクト
米国の州立大学 Oklahoma State University(オクラホマ州立大学)の工学・建築・技術学部において、火災安全性の向上を目指す3Dプリント技術に着目した研究が進行中である。本研究は、3Dプリントによって作製されるバイオポリマー系ナノコンポジット材料の熱・質量移動の複雑な挙動を解明し、火災発生時の燃焼特性を最適化することを目的としている。
本研究は、現在以下の三つの主要目的に基づいて進められている。
まず、3Dプリントによる各種構造物が持つ固有の層状構造や微細な隙間が、火災発生時にどのような燃焼挙動を示すかを詳細に解析。次に、従来の製造方法とは一線を画す、耐火性・安全性に優れたナノコンポジット材料の開発に取り組む。最後に、これらの知見を実社会に応用し、特に自動車産業などで使用される軽量かつカスタマイズ可能な3Dプリント部品の火災リスクを低減する具体策を提案する。
3Dプリント技術では、物体が層ごとに積層されるため、内部に微細な隙間やパターンが生じる。これらの構造的特徴が、火災時の熱の伝達や燃焼拡大に大きな影響を及ぼすことが明らかになっている。研究チームは、特殊なナノ粒子をプラスチックに添加することで、従来の材料に比べて燃焼速度を抑制し、火災リスクを大幅に低減する新たな3Dプリント材料の実現を目指す。この取り組みは、3Dプリント技術の発展とともに、安全性の確保が求められる現代産業において非常に重要な意義を持つ。
また、本研究を主導するRyan Shen准教授は「工学的解決策は公衆の安全や環境の持続可能性に直結する」との信念の下、実験室レベルだけでなく、実社会に即した火災安全技術の確立に努めている。
研究メンバー Dr. Shen, Shuda Wang, Qihao Li.
本研究の成果は、北米最古の火災・安全工学プログラムとして知られるOSUのFPSTプログラムの伝統をさらに強固なものとするとともに、Oklahomaが新たなバイオポリマー生産拠点として注目される契機となる。さらに、実験結果はFPSETのカリキュラムに反映され、最新の3Dプリント技術と火災安全対策に関する実践的な知識が学生に提供されることで、今後の産業界における安全性向上に貢献するものと期待される。
3Dプリント技術は、カスタマイズ性や生産性の高さから多くの産業分野で利用が拡大しているが、その安全性確保は依然として大きな課題である。本研究は、革新的なナノコンポジット材料の開発を通じ、火災リスク低減と安全性向上に寄与する新たな技術的可能性を示すものであり、今後の3Dプリント技術の発展において重要な一歩となる。
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