食品安全認証を取得した3Dプリンティング材料

FABULOUS、食品安全認証を取得した3Dプリンティング材料で米国進出を果たす

3Dプリンティングの普及に伴い、その応用は様々な分野に広がっていることは周知の事実である。航空宇宙、自動車分野、医療分野では3Dプリント技術の活用が定着しているが、近年、消費材や高級品の生産、建設業界、そして食品業界でも活用範囲は広がりつつある。特に、バリラ、Revo Foods、Steakholder Foodsのような食品業界による成長は著しく、3Dプリンタから生み出される革新的な食材が注目されている。そんな食品分野における応用のひとつとして、食品と直接接触する構造物の製造にも3Dプリンティングが利用されることが増えている。例えば、食品用ノズル、グリッパー、スクレーパー、皿、カトラリー、包装材、または機械部品などがある。

食品に対して安全なPA11

食品と接触するすべての物品は、消費者の安全を確保するため、厳格な規制に従わなければならない。このような規則や安全基準は、エンドユーザーにとっては必須だが、材料メーカーにとっては、関連当局の規制が厳しく、大きな課題となっている。
EUでは、指令10/2011がポリマー材料が「食品安全」と認定されるための基準を規定しており、米国では食品医薬品局(FDA)が食品安全に関する材料と手順を規制(連邦規則集タイトル21″CFR21″)している。同様に、日本国内にも厳しい規制があり、これらのルールは各国で微妙に異なり、承認も素材の加工方法によって異なる。

BLUECAREおよびDETECT材料で3Dプリントされた食品ノズル

例えば、PLAやPETGは、FDAによって食品安全素材とみなされるが、着色されていない場合に限られる。これらの材料は主にFDMプロセスで加工されるため、ノズルやホースとの接触によって材料が汚染される可能性があるというさらなる問題も含まれる。また、SLS 3Dプリンティングでは、この根本的な問題が解消され、食品に安全な材料の加工に適したプロセスとなるが、利用可能な材料(PA11とPA12)を詳しく見てみると、エンドユーザーにとって本当に安全な認定材料は非常に限られている。そうしたギャップを埋めようとしているメーカーのひとつが、フランスの企業 FABULOUS だ。同社の3Dプリンティング材料は既にヨーロッパで高い評価を得ており、現在米国への国際特許手続きにより、北米市場での足掛かりを得ようとしている。

FABULOUS、食品安全認証を受けたPA11を製造

FABULOUSのポリマー粉末は、SLSマシンの約90%で使用でき、価格競争力の面でも優れている。他の材料メーカーの中にも食品に対して安全な材料を提供しているところもあるが、それらはPA11ベースではない。一方、FABULOUSは食品に安全なPA11ベースのパウダーでヨーロッパで大きな成功を収めている。

2021年に発表した、食品業界のニーズに特化した食品対応の新しいパウダー材料「BLUECARE」は、ヨーロッパでの成功に重要な役割を果たした。品中の異物やプラスチック片の識別を高めることができる視認性に優れた青いプラスチック部品に適したBLUECAREは、現在様々な産業の生産ラインに使用されている。

BLUECAREを使用して3Dプリントされたモジュール式食品コンベアベルト

BLUECAREベースの3Dプリント用フィラメント「PA Blue Metal Detectable

BLUECAREも、バイオベースの天然原料であり、添加物や有機顔料を使用せずに3Dプリンティング用のPA11粉末として開発された。一方、同じナイロン粉末であるPA12は石油由来であり、3Dプリント部品としてはFDAに準拠していない。また、EUで禁止されている二酸化チタンを含む添加物で構成されているため食品用途には適していない。

BLUECAREのベースとなるPA11ブルーパウダーは、最終消費者の健康安全を保証し、必要な認証を確保しているため、欧州ではEU /2011 – 1935/2004に基づき、米国ではFDA CFR 21に基づき、食品安全性が認証されている。
関連記事:食品に使える3Dプリント用材料「BLUECARE」

FABULOUSは、ロサンゼルスで開催される「RAPID + TCT」でこの素材を発表し、セーフティ&セキュリティ製品群をさらに拡大する革新的な素材を年内中に市場投入しようとしている。


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