大型3Dプリンターで船体を短時間に一体成形、CEADの専用工場が示す次世代造船
オランダに本拠を置く大型3Dプリンター(LFAM:Large Format Additive Manufacturing)メーカー CEAD が、3Dプリンター専用の造船拠点「Maritime Application Center(MAC)」にて、量産対応の3Dプリントボート「MAC ONE」を設計・製造した。この船体は、大型3Dプリンターと3Dプリント技術に最適化した複合材「HDPro」により、約80〜90時間台で一体成形し、性能・コスト・スピードの各面で実用性を確認した。
3Dプリンター専用の生産拠点である「MAC」は、最大12m級の船体をデジタル製造する造船工場としての可能性を示しており、ここで製作された初号モデル「MAC ONE」は、3Dプリンターによる大型造船の実用性を示すケーススタディである。MACは自動化された専用装置群で少人数運転かつ高い生産性を狙い、年間100隻規模のスループットも視野に入れるとしている。
MAC ONEの船体は、ガラス繊維を25%充填した熱可塑性複合材「CEAD HDPro」により、従来の高密度ポリエチレン比で高い剛性・耐衝撃性・低吸水を備える。この素材は熱可塑であるため、押出し溶着での一体化・修復が容易で、PE/PP系の循環インフラにも適合しやすい点が特徴だ。
製造面では、CEADの船体専用装置「Boat Hull Production Machine」とシミュレーション主導のツールパス生成により、二重曲面などの複雑形状を型なしで直接造形する。
CEADの特許取得済みのサポートピンシステム(プリンターが造形途中で「ピン状の支え」を必要な箇所にだけ差し込む)技術により、オーバーハング部分を「宙に浮いた状態」で支えながら空中印刷(mid-air printing)するため、後加工と安全リスクを抑制。実証では船体の主要造形を約82〜88時間で完了したと報告されている。
設計段階で強度と実用性を両立するため、厚肉外殻+ジグザグ充填による剛性確保や、二重壁構造などを採用。デッキ排水(セルフベイリング)、配線ダクト、燃料タンク、座席部などの機能を3Dモデル段階で造り込み、後付け工程を圧縮。コンソール等の艤装は別体で造形後、同材溶着で水密と一体強度を確保する。
MACでは、造船大手Damenとのワークボート共同開発など、産業実装に向けた連携が進んでいる。大型3Dプリンターを中核とするマイクロファクトリー発想は、建機や自動車の補修部品・治具領域で進むデジタル製造とも整合的で、海洋分野でも地産地消・短サプライチェーン化の可能性を拡げる。
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