世界のAM市場、100億ユーロ突破と安定成長へ

市場規模が100億ユーロ超に成長、アジア太平洋地域の成長と宇宙・防衛産業が牽引

コンサルタント会社 AMPOWER が発表した2024年の最新レポートによれば、2023年の世界の工業用金属およびポリマーAM市場規模が100億ユーロ(約1兆6,488億円)を突破し、前年比10.3%の顕著な成長を遂げた。一方で、前年の18%の見通しと比較すると成長率はわずかに減速した。この減速は、特に金属・ポリマー分野で設備供給企業の成長が5%程度にとどまったことに起因する。

世界の金属およびポリマーAM市場の推移

この減速にもかかわらず、2028年までに市場規模は年間成長率13.9%で安定成長し、200億ユーロに達すると予測されている。特にアジア太平洋地域の設備供給企業は、2028年まで年間16%の成長率を期待している。

分野別分析

2023年における金属パウダーベッドフュージョン(PBF)システムの売上は市場全体の40%を占め、ポリマーPBFは10%を超えた。すべての技術が産業化の成熟段階に達したわけではないが、革新への意欲は続いているが、2023年は3Dプリンティングのスタートアップ企業への資金調達が減少した。これは世界的なベンチャーキャピタルの不足やスタートアップ企業の収益性が約束通りに達成されないことへの懸念が原因だ。

PBFの生産性は向上し、エントリーレベルでもデュアルレーザーの構成で生産効率を高める傾向にある。しかし、ユーザーの予測が実際の生産能力を上回るケースもあり、追加購入を検討する前に既存システムに満足する期間が長くなった。
また、本レポートでは、航空宇宙・防衛分野が過去2年間で30%の成長を遂げたと指摘。今後の世界的な防衛予算の増加は、この分野でのAM技術採用を促進する見込みだ。一方で、自動車分野でのAM機器投資は停滞しており、高ボリュームAM技術が産業成熟度に達することが成長の鍵となる。
歯科分野では、アライナー型取り用のカスタムモールドや金属製の歯科修復物など、カスタマイズされた用途でのAM採用が引き続き盛んであり、産業分野が2028年までに機器への投資で主導する見込みで、多様なAM技術を活用していく。

2018年から2023年までのメタルPBF装置販売動向と2028年の予測

ポリマーAMに関しては、2023年のフィードストック市場が12%以上成長し、今後もシステム生産性とベースの増加により、成長が続くと予想。PA12パウダーは引き続き主力となる材料であるが、高リフレッシュ率の必要性から効率が低いとされており、レポートによると、柔軟なTPU素材も消費財や工業用途でシェアを拡大しているという。

AMセクターの最新動向

他の調査会社であるCONTEXTは、2023年下半期の産業用3Dプリンタの出荷が停滞したと報告。特に、ポリマー分野での出荷の減少が顕著で、2023年第3四半期に前年同期比17%減少した。一方で、金属プリンタの出荷は前年同期比で3%の減少に留まった。
また、2024年3Dプリンティング業界エグゼクティブ調査では、3Dプリンティングの専門家から新たなトレンドや成長の軌跡について洞察が共有された。業界プロフェッショナルによる重要な観察点として、多様なセクターと新興市場での3Dプリンティングの採用拡大、サプライチェーン課題への対応における積層造形の重要性の拡大、消費財製造への3Dプリンティングの利用増加が挙げられている。

2021年から2023年のポリマー原料消費量と2028年の予測 

AMPOWERレポートの見通し

2024年のAMPOWERレポートは、AM市場全体での成長を見込んでいるが、金属とポリマーのPBFシステムは市場の大きな部分を占め続ける一方で、新たな技術革新が続くとされている。スタートアップ企業への資金調達に関する課題や、機器供給企業の成長鈍化が一時的に影響を与えたが、全体的な市場の見通しは明るい。
宇宙・防衛産業は引き続き市場の牽引力を維持し、2028年までにこのセクターへの投資が大幅に増加する見込みだ。高ボリュームAM技術が成熟し産業化されると、自動車分野での投資も回復すると予測されている。また、2024年のエグゼクティブ調査からは、各セクターでの3Dプリンティング技術の利用が拡大すること、サプライチェーン問題に対処するための重要な技術としてAMが位置付けられることが明らかになっており、製造業における新たな基盤として、今後もAM市場の成長が続くであろうと期待している。


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