南京江寧ハイテク区に年3億錠規模の3Dプリント医薬工場が誕生、完全デジタル生産で個別最適化を推進
中国・南京を拠点に3Dプリント医薬の研究開発を進める先進企業である Triastek は現在、江寧ハイテク区に世界最大級の3Dプリンターによる医薬品工場を建設している。年3億錠規模の完全デジタル生産を目指し、錠剤内部に溶出制御や部位送達の仕組みを組み込むなど3Dプリント技術ならではの設計を実現する計画だ。
南京に建設中の新工場は、従来の製薬工場のように混合や打錠機が並ぶ姿とは異なり、内部に10万点以上の監視センサーを持つ自律型3Dプリンター群が整備され、原料のブレンドから印刷、包装までわずか3工程で完結する。こうした完全デジタル化により、各錠剤の製造履歴を一粒ごとに追跡できるトレーサビリティも実現する。
3Dプリント技術を使うことで、錠剤内部に微細なチャネルや多層構造を組み込み、薬が体内で溶ける速度や場所を制御できる。これにより、必要な時に必要な場所で効率的に薬効を発揮する“個別最適化された薬”を量産できる可能性が開ける。
Triastekが3DプリントしたIgAN治療薬D23
Triastekは江蘇省当局から中国初となる「3Dプリント医薬の製造許可」を取得し、世界で商用化に成功した2社目の企業となった。先例は2015年に米Aprecia社がFDA承認を受けたてんかん治療薬「Spritam」であり、今回の動きは一時停滞していた分野を再び大きく前進させるものといえる。ただし課題は少なくない。薬はわずかな誤差が安全性に直結するため、品質の一貫性や規制当局による厳格な検証が欠かせない。こうした要件が普及の障壁となってきたが、Triastekは独自技術と臨床データによりその壁を突破しつつある。実際、抗凝固薬T20jは臨床試験を完了し中国での承認申請段階にあり、さらに胃内滞留型薬T20Gも米FDAと中国で治験許可を獲得している。
Triastekはホルモン薬の第2ライン整備を進めつつ、10種類以上の候補薬を臨床初期段階に抱え、研究から量産までの期間を従来の数年から数か月に短縮する可能性を示している。今回の南京工場は薬の製造を大量生産から個別最適化へと転換する象徴であり、将来的には病院内や地域拠点で小規模に薬を生産する分散型モデルへの応用も視野に入れ、医薬品サプライチェーン全体の構造を変革する可能性を秘めている。
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