3Dプリンターで三叉神経を修復へ

英シェフィールド大学、3Dプリント技術で三叉神経損傷の回復と痛み研究を加速

英国シェフィールド大学の研究チームは、3Dプリンターと生体適合材料を用いて三叉神経の欠損部を橋渡しするチューブ状構造を開発した。この技術は、従来の縫合や移植では回復にばらつきが大きかった課題に対し、3Dプリント技術で神経線維の伸長を誘導し再生を高精度に支援する。

三叉神経は脳と顔面を結ぶ重要な感覚神経であり、歯科治療などの外傷で損傷すると舌や唇にしびれや灼熱感が生じる。軽度であれば違和感程度だが、重度の場合は鋭い痛みによって食事や会話が困難となり、うつや孤立を招くこともある。
従来の治療では、損傷部分を切除して神経を縫合するか、筋や神経を移植する方法が主流だった。しかし回復は不安定で、欠損が広い場合は接合そのものが難しい。こうした課題に対し、シェフィールド大学は材料科学者と連携し、3Dプリント技術を用いた「神経ガイドチューブ」を開発した。このチューブは生体適合材料で作られ、内部に微細な構造を設計できる。これにより神経線維が正しい方向に伸びやすくなり、従来法よりも安定した再生を期待できる。動物モデルや臨床の知見を基に改良を進め、実際の患者にも応用可能な段階に近づいている。

さらに、研究チームは手術時に採取した損傷神経の組織と患者の「痛みの履歴」を紐づけた独自データベースを構築。なぜ強い痛みを感じる患者とそうでない患者がいるのかを分子レベルで探り、将来的には「痛みを抑えるための新治療」に結びつけようとしている。


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