SUTD、生分解性素材と3Dプリント技術で導電回路を形成
シンガポール工科デザイン大学(SUTD)の研究チームは、植物由来の生分解性プラスチックを用いた導電性3Dプリント技術を新たに開発。植物由来のセルロースアセテートとグラファイトを組み合わせた独自のインクを活用し、環境負荷の低い導電性構造体の造形に成功した。
従来のセルロースアセテートは熱に弱く、一般的な3Dプリント方式では加工が難しかった。そこで研究チームは「ダイレクトインクライティング(DIW)」という室温でのインク押出方式を採用。さらに、印刷を水中で行うことで、沈殿硬化を実現。このプリントプロセスにより、インク内のアセトンが水によって素早く抜け、インクが拡散せずにその場で固化する仕組みが確立された。この水中プリント法により、通常は30〜50%の含有量が限界とされる導電性フィラー(グラファイト)を60%まで配合可能となり、高い導電性(30S/m超)を維持しつつ、高精度なプリントが可能になった。プリントされた構造体はLED回路にも応用可能で、柔軟な電子回路やソフトセンサーの開発に期待がかかる。
さらにチームは、ジェル状の支持媒質を用いた3Dプリントにも成功しており、オーバーハング構造などの複雑な形状もサポート材なしで造形している。これにより、製造工程の効率化と材料の無駄削減も実現される。
使用されるすべての素材(セルロースアセテート、グラファイト、アセトン)は生分解性または低毒性であり、環境に配慮した電子機器製造が可能となる。研究チームは今後、他のポリマーや導電材料への応用や、実環境下での性能評価も進め、持続可能な3Dプリント技術の実用化を目指している。
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