サンステラ主催「BambuLab H2D」お披露目会

Bambu Lab H2Dシリーズ、日本初公開で示した高精度・高速性能

サンステラとフュージョンテクノロジーは、2025年5月29日、東京都・池袋にて国内初となる「Bambu Lab H2Dシリーズ」のお披露目会を開催した。当日は、3Dプリンター業界関係者やユーザーが多数来場し、会場は終始活気に包まれた。本記事では、サンステラによる発表内容とともに、当日の展示や来場者の反応を中心にイベントの様子をお伝えする。

今回展示されたH2Dシリーズは、これまでの一般的なデスクトップ3Dプリンターの枠を超え、プロフェッショナルユースにも耐えうる性能を追求したモデル群である。単なる趣味用途向け製品ではなく、小ロット生産や試作、研究開発用途まで視野に入れた拡張性と高い信頼性を特徴としている。

350×320×325㎜³の大容量ビルドボリュームと堅牢なフレーム構造

H2Dシリーズの第一の特徴は、350×320×325㎜³という広いビルドボリュームを確保している点にある。多くのデスクトップ機では200㎜角前後が上限とされる中、H2Dは大型パーツや一体成形モデル、複数部品の同時造形にも対応できる設計だ。また、チャンバー(造形室)を閉鎖型としたことで、外気温の影響を抑え、造形中の温度変化を最小限に抑制する。その結果、特にABSやナイロンといった温度管理が重要な素材でも、割れや反りを抑えた安定した造形を実現する。

X1-Carbon(右)を大幅に上回る造形領域を有するH2D

近年では大型モデルを扱う試作案件や、エンジニアリング向け部品製作など、実用レベルでの利用が想定されるシーンが増えているが、H2Dはまさにそのニーズに応えるモデルと言える。

最大1,000㎜/Sの高速移動と20,000㎜/S²の加速度

H2Dシリーズは、ツールヘッド(X/Y軸)の最大移動速度1,000㎜/S、および加速度20,000㎜/S²を達成しており、造形時間を大幅に短縮しながら、高品質な造形精度により後工程での手直しを最小限に抑えることが可能だ。具体的には、ABSモデルを280℃で印刷する際、標準ノズルでは40㎜³/Sの吐出速度を実現。オプションのハイフローホットエンドを装着すれば、65㎜³/Sまで流量を高めることができる。たとえば大型プロトタイプを一度に数十個印刷したい場合でも、1日での処理量に余裕がある。これにより、開発スケジュールの短縮や小ロット受注への迅速対応が可能になる。

左)標準ノズル、右)ハイフローホットエンド

デュアルノズル・サーボ式エクストルーダーとマルチマテリアル対応

H2Dシリーズには、デュアルノズルエクストルーダーが搭載されている。両ノズルは最高温度350℃まで対応しており、PLAやABSはもちろん、カーボンファイバー強化材、グラスファイバー強化材、TPU、ポリプロピレンなど、幅広い素材での造形が可能だ。また、ノズル切り替えの際には専用のソフトウェアアルゴリズムが最適化を行い、無駄なパージ(洗浄)を最小限に抑制。マルチマテリアル造形や多色印刷もスムーズに行える。

デュアルノズルによりサポート材も綺麗に吐出できる

AIとコンピュータビジョンを活用したインテリジェントモニタリング

H2Dシリーズには、AIノズルカメラを含む4つのコンピュータビジョンカメラと、合計36個の各種センサーを組み合わせて、造形プロセスを常時監視。具体的には以下の機能が搭載されている。

  • AIバックドノズルカメラ:造形中のエクストルージョン状態をリアルタイムでチェックし、フィラメントの偏位や糸引き異常を即座に検知。
  • サイドカメラ/トップカメラ:層剥がれや造形ズレ、素材の層間剥離といった精度異常を監視。
  • 温度・湿度センサー:チャンバー内外の環境を測定し、最適な温度環境を維持。
  • Pre-Flight Checklist by AI:印刷開始前に自動チェックリストを実行し、ヘッド位置、フィラメント供給、ベッドレベリング状態を包括的に診断。
  • 射出成形レベルの品質を実現
    ビジョンエンコーダープレートと5µm解像度の光学測定技術を組み合わせ、一貫して信頼性の高い 50µmの動作精度を実現。

当日はビジョンエンコーダープレートを使用したキャリブレーションデモを実施

これらの機能により、ユーザーが造形失敗や品質低下を未然に防げる仕組みを提供。たとえば、造形中にエクストルージョン異常が検知されると、自動的にプリントを一時停止してユーザーにアラートを通知する。従来のように「完成したら中身が空洞だった」「造形中に糸が絡まってしまった」というトラブルが減少し、稼働効率を大幅に向上させる。

高精度造形によりベアリングやネジもキッチリと填る

AMSによるフィラメント乾燥機能

AMS(自動素材供給システム)の最新モデルである「AMS 2 Pro」には最大65℃の乾燥機能を追加。また、新たにラインアップされた「AMS HT」には最大85℃の乾燥機能が備えられている。これらのフィラメント供給システムにより、湿度に敏感な特殊高機能フィラメントも最適な状態で使用できる。

さらに、HEPA/H12グレードフィルターと活性炭フィルターを組み合わせたエア浄化システムが、VOC(揮発性有機化合物)や微細粒子を除去し、室内空気を清浄に保つ。長時間稼働時でもチャンバー内部にこもる有害物質を最小限に抑え、ユーザーの作業環境を維持することができる。

レーザー加工モジュール・デジタル切断・ペンドローイング機能

Bambu Lab H2D Full Combo Laser」は3Dプリント機能だけにとどまらず、レーザー加工モジュール(10W/40W)やデジタル切断ブレード、ペンドローイング機能を簡単に着脱可能なマウントとして用意しており、以下の作業が一台で完結する。

  • レーザー切断・彫刻(10W/40W):10Wモデルは5mm厚まで、40Wモデルは最大15mm厚の木材・アクリル素材などを切断・彫刻できる。
  • デジタル切断ブレード:薄手の塩ビシートや紙素材などを精密にカットし、切断パーツをそのまま3Dプリントパーツに組み合わせることが可能。
  • ペンドローイング:M5サイズのペンやマーカーを装着でき、3D造形物の表面に文字やイラストを直接書き込むことができる。

H2Dレーザーを使用した加工事例

これらの機能拡張により、3Dプリント後の切削工程やペイント工程を別途外注する必要がなく、社内のラピッドプロトタイピング環境を大幅にシンプル化することができる。

イベント当日の盛況と来場者の声

お披露目会当日は、H2Dシリーズを目当てにした来場者が予想を大きく上回り、会場は満席となった。実機デモでは多くのユーザーが順番待ちの列をつくり、解説スタッフによる性能紹介や質疑応答が絶え間なく行われた。また、来場者同士の情報交換も盛んに行われ、Bambu Lab H2Dシリーズに対する期待感と注目度の高さを物語っていた。

イベント当日の様子

イベント限定特典と導入メリット

今回のお披露目会に参加し、6月末までにH2Dシリーズ(Comboモデル)を成約させた来場者には、以下のいずれかを無償提供する特典が用意された。

  • ビジョンエンコーダー(精度を高めるオプションプレート)
  • AMS HT(最大85℃乾燥機能付きの自動素材供給システム)
  • Polymaker製フィラメント3万円相当分

Bambu Lab H2Dシリーズは、プロフェッショナル領域でも十分に戦える性能を持つ個人製造プラットフォームであり、これだけの要素を一体化した製品は市場でも非常に稀だ。研究開発や小ロット生産、ラピッドプロトタイピングを求める現場において、H2Dはコストパフォーマンスと機能性の両面で優れた選択肢となる。

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