フェルミ研究所とノースウェスタン大学が高温超伝導体を3Dプリンタで製造する技術を開発
米国の国立高エネルギー物理学研究所であるフェルミ国立加速器研究所(以下 Fermilab)とノースウェスタン大学の研究チームは、高温超伝導体を3Dプリンタで作製する世界初の技術(特許申請中)を開発した。これにより、従来困難だった複雑な形状や高性能磁場制御が可能となる。
一つの種子から3Dプリントされた超伝導体のサンプル:Dingchang Zhang
高温超伝導体とは、電気を一切の抵抗なく通す特性を持つ「超伝導体」の中でも、比較的高温(といってもマイナス196℃前後)でその効果を発揮する特殊な材料群である。従来の超伝導体に比べ、冷却コストが大幅に抑えられるため、医療機器やリニアモーターカー、発電機などさまざまな応用が期待されている。今回、米国エネルギー省傘下のFermilabの支援を受けたこのプロジェクトでは、3Dプリント技術と材料科学の融合により、超伝導体の構造製造に新たな可能性が開かれた。
イットリウム・バリウム・銅酸化物の単結晶から3Dプリントされた超伝導体
研究チームはまず、酸化イットリウム・バリウム・銅(YBCO)などのセラミック材料を粉末状にした“前駆体”をペースト状にして3Dプリンタで造形。造形後は高温焼結処理を行うことで、多結晶構造の超伝導体を得る。この段階までは従来技術と変わらないが、本研究の真価はここからである。焼結した3Dプリント構造体に、単結晶構造を持つネオジム・バリウム・銅酸化物(NdBCO)のシード(種結晶)を設置。その後「トップシード溶融成長法」によって構造体を部分的に溶かし、ゆっくりと冷却することで、シードと同じ結晶方向に再結晶化させることに成功。結果として、3Dプリント構造でありながら単結晶に近い性能を持つ超伝導体が完成した。
3Dプリントされた超伝導コイル:Dingchang Zhang
この方法によって、最大直径10cmの超伝導体の製造が可能であることも実証されており、研究チームはさらなる大判化を視野にマルチシード法の開発にも取り組んでいるという。研究者の一人であるダンナンド教授は「この技術が加速器や超伝導磁石の設計に革命をもたらします」と語っており、今後の応用可能性に期待が集まっている。
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