- 2025-2-24
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3Dフードプリント技術で培養魚フィレの大量生産に成功
過剰漁獲、気候変動、食糧安全保障への懸念が高まる中、培養シーフードは従来の水産養殖に代わる持続可能な選択肢として注目を集めている。しかし、食感、構造、栄養価を維持しつつ生産規模を拡大することは依然として課題であった。
このような課題に対応するため、中国海洋大学の研究チームは、食用多孔性マイクロキャリア(細胞の増殖や組織形成をサポートするために使用される、食用素材で作られた多孔質の微小な足場/以下 EPM)と3Dフードプリンティング技術を活用し、魚の筋肉細胞と脂肪細胞を効率的に増殖させ、バイオインクとして構造化し、3Dフードプリンターによって天然の魚肉に近いフィレを大量に生産する新たな手法を開発した。
a) 細胞性微小組織バイオインクの特性。 b) 3Dプリントで培養された魚のフィレの未加工および調理済みプロトタイプの外観。 image : 中国海洋大学
多孔性足場による高密度細胞増殖
研究チームは、ゼラチンを主成分とする食用多孔性マイクロキャリア(EPM)を改良し、細胞の付着、成長、分化を向上させた。具体的には、低温でゼラチンを固める際に塩化ナトリウム(NaCl)を加え、氷の結晶の大きさを調整することで、細胞が増殖しやすい微細な孔を持つ足場を作り出した。この方法により、ハタ科魚類の筋衛星細胞(SC)と脂肪由来幹細胞(ASC)は、それぞれ初期の約500倍と460倍に増殖。さらに、125ミリリットルの小型容器から4リットルの大型装置にスケールアップしても、細胞の生存率を80%以上に維持することに成功した。RNAの解析により、増殖した細胞が筋肉の成長や細胞の増殖に関与する遺伝子を活性化し、分化能力を保持していることが確認された。
Steakholder Foods の培養魚専用3Dプリンタ
3Dフードプリントによるフィレ作製
研究チームは、成熟した筋肉および脂肪のマイクロ組織をバイオインクとして混合し、市販の3Dフードプリンターを使用して、長さ100mm、高さ15mmの構造化された魚フィレを作製。プリントされたフィレは、天然の魚肉に類似した層状の食感を持ち、調理後にはメイラード反応により表面が褐色化した。分析の結果、プリントされた魚フィレは約70%の水分を保持し、約35%の重量減少を示し、従来の魚肉と同様の特性を持つことが確認された。ただし、噛みごたえや凝集性などの食感特性はやや低く、食品構造のさらなる改良の余地があるという。
また、栄養面では、培養魚は天然の魚肉と比較して100グラムあたり8.5グラム多くのタンパク質を含み、脂肪は68.92%減少、コレステロールは87.93%減少した。オメガ3脂肪酸のプロファイルは安定していたが、ナトリウム含有量は天然の魚肉よりも100グラムあたり192.7ミリグラム高かった。必須アミノ酸は51%増加し、揮発性有機化合物のプロファイルの違いが味や香りのさらなる最適化の必要性を示唆している。
Steakholder Foods の培養魚専用3Dプリンタで造られた魚肉
今後の展望
生産規模のさらなる拡大には課題が残るものの、研究チームは100リットルのバイオリアクターで1バッチあたり約750グラムの培養魚を生産できると推定しており、EPMベースの細胞増殖が商業的な可能性を持つことを示している。
本研究は、構造化された培養シーフードの生産において重要な進展を示しており、繊維配向、バイオインクの組成、製造コストの最適化が、市場投入に向けた鍵となるとしている。これらの技術の進歩により、培養魚は海洋生態系への負荷を軽減しつつ、世界的な需要を満たす持続可能な代替手段として期待される。
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