環境にやさしく高い機能性を兼ね備えた貝殻と小麦ベースの形状記憶PLAフィラメント
英国の国立大学ノッティンガム・トレント大学(Nottingham Trent University)と国立
複合材料センター(National Composites Centre)の研究者らは、ムール貝の殻と小麦を混合して作製したPLA(ポリ乳酸)ベースの複合フィラメントを開発した。本素材は3Dプリント技術を活用し、形状記憶機能や強度、耐炎性などの特性を向上させることができるという。
研究チームは、貝殻と小麦の含有量を変化させながらPLAと混合したフィラメントを試作。その後、デスクトップ向け3Dプリンタとフィラメントメーカーを用いてサンプルを成形し、熱処理による形状記憶機能の付与を確認。結果として、小麦を配合したPLAは93.3%という優れた形状回復率を示し、ムール貝を配合したPLAは純PLAよりも燃えにくい性質を持つことが明らかになった。
さらに、複数素材を組み合わせるサンドイッチ構造や機能的勾配を持たせたプリント方法では、強度がより向上することも確認された。この研究では、わずか5グラムのコイル状構造が3キログラムもの重量を支え、1100Nの荷重にも耐えられる強度を示すなど、3Dプリントによる素材設計の可能性を大きく広げている。また、廃棄物を有効活用した生物由来の複合素材であることから、環境配慮型の3Dプリント素材としての期待も高まっている。
本研究で提案された形状記憶PLAは、グリッパーやアクチュエーターなどの機能部品、また環境にやさしいカトラリーやパッケージング材といった幅広い分野での応用が考えられる。廃棄物をリサイクルし、汎用的な3Dプリンターで造形できるという手軽さも相まって、今後はより多様な生物由来材料を用いた複合フィラメントの開発が進むと期待されている。
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