自然エネルギーで真水を作る3Dプリント装置

海水を安全な飲料水に変える3Dプリント蒸発装置が太陽光脱塩効率で過去最高を記録

香港城市大学、香港理工大学、ニューカッスル大学の共同研究チームは、太陽光だけで効率的に海水を真水に変える3Dプリンタで造られた自立浮上型の太陽光蒸発装置を開発。研究チームが共同開発したこの自立型デバイスは、3Dプリント技術による革新的な構造と素材を活用し、海辺など電力の無い環境でも高効率で稼働する次世代の水供給ソリューションとして注目を集めている。

3次元階層型浮遊配置による光熱界面蒸発

装置の中核部分は、金属(AlSi10Mg合金)を3Dプリンターを用いて造形されたもので、太陽光をほぼ100%吸収し、1時間あたり2.23kg/㎡の蒸発速度と、1.23kg/㎡の真水回収率を実現した。これにより、これまでの太陽光利用型脱塩装置の課題であった「塩分の蓄積」「エネルギー供給の難しさ」「清掃の手間」などが大幅に解消されている。

装置は複数の層から構成されており、上部には光熱変換効率の高いポリピロールナノ粒子を使用。中間層には酸化処理されたアルミニウム、底部には水を吸収しやすく、かつ水面に浮かぶPTFE(フッ素樹脂)素材が使われている。この構造により、熱損失を抑えながら安定した水分蒸発が可能となった。
さらに、部品のモジュール化によって簡単に交換・保守ができ、現場での持ち運びや設置も容易になっている。また、冷却には海水を利用した自然熱交換が採用されており、外部電源を一切使用しない。

スケールアップ浮遊脱塩装置の現場試験

フィールドテストでは、香港の行楽地である烏渓沙の海岸で実物大モデルが稼働し、真水の収集性能や構造の耐久性が実証された。また、25%の高濃度塩水(ブライン)を用いた長期試験でも、装置は安定動作を維持。最終的な水質は、世界保健機関(WHO)の飲料水基準をすべて満たしたという。

この研究成果は、将来的に災害時の緊急水供給や、電力インフラの整わない地域での水資源確保手段として、大きな可能性を秘めている。


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