柔らかなシリコーン構造に電極と冷却機構を統合、3Dプリンターで小型脳インプラントの試作工程を簡素化
ドイツのライプニッツ高分子研究所(IPF)とドレスデン工科大学のEKFZデジタルヘルスセンターの研究チームは、薬剤が効きにくい局所てんかんの新たな治療法を目指し、脳活動を記録しながら必要な場所だけを冷却できる3Dプリンター製インプラントを開発した。

今回の研究では、押出方式の3Dプリンターを使い、柔らかなシリコーン構造の内部に流路、電極、電子部品をまとめて配置する設計手法を採用した。インプラントは約10×10×3mmの小型構造で、脳表面に置いて脳波に近い電気信号である皮質脳波(ECoG)を測定すると同時に、内蔵した冷却機構で狙った領域の温度を下げる。
一般的な神経インプラントは電気刺激や信号記録を中心とするものが多いが、本研究は記録と局所冷却を1つの柔らかなデバイスへ統合した点が特徴だ。

研究チームはまずコンピューター解析と脳組織を模した寒天モデルで、素早く安定した局所冷却が可能かを確認した後、てんかんに似た発作活動を起こしたラットで検証し、3Dプリンターで形成した複合電極が市販システムと同程度のECoG信号を取得できることを確認。さらに15、18、20、25℃を目標とした冷却試験では、局所的な低温化によって発作様活動を抑えられることを示した。
3Dプリンターを使う利点は、複雑な流路や電極配置を組み込みやすく、設計変更も短期間で行えることにある。従来、複数の機能を持つ神経デバイスは部品点数が増え、大型化や製造工程の複雑化が課題だったが、今回の手法は小型化と試作速度の向上につながる可能性がある。
将来は患者ごとの脳形状や治療部位に合わせたカスタム設計への応用も期待される。

この分野では、研究チームが2020年にも柔らかな材料を3Dプリンターで造形し、神経や脳表面に合わせたバイオ電子インプラントの試作技術を報告している。今回の成果はその流れをさらに進め、信号を読むだけでなく温度を制御する機能まで一体化したもので、研究成果は査読付き学術誌『Advanced Science』に掲載され、欧州研究会議(ERC)の支援を受けた。
ただし、現段階はラットを用いた前臨床研究であり、人に対する安全性や長期使用時の耐久性、完全埋め込み型システムとしての実用性は今後の検証課題である。
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