微細藻類を利用した3Dプリンティングに成功

ハイデルベルク大学、微細藻類を利用した3Dプリンティングに成功

ドイツ最古の大学ハイデルベルク大学の研究チームは、微細藻類から抽出したバイオインクを利用した3Dプリンティングに成功。この材料は、豊富な脂質と光活性色素を含むため、持続可能なプリンティング素材として注目されている。

ハイデルベルク大学分子システム工学・高度材料研究所(IMSEAM)のエヴァ・ブラスコ教授率いる国際研究チームの発表によると、微細藻類の一種であるオドンテラ・アウリタと緑藻のテトラセルミス・ストリアタは、高い脂質と光活性色素の含有量から、3Dレーザープリンティング用の持続可能な素材を生産する「バイオファクトリー」として特に有望であるとしている。研究チームは、微細藻類から抽出した原料を用いて、複雑なバイオ互換性を持つ3Dマイクロ構造を製造するためのインクの開発に初めて成功。この微細藻類ベースの素材は、将来的にインプラントや3D細胞培養用の足場として利用できる可能性があるとしている。

Image : Clara Vazquez-Martel

多くの3Dプリンティング技術の中でも、二光子3Dレーザープリンティングは、微細・ナノスケールでの製造において特に優れた解像度を誇り、光学・フォトニクス、マイクロ流体力学、バイオメディカル分野など、さまざまな分野で応用が進んでいる。
従来の高精度な3Dレーザープリンティングは、主に石油化学系のポリマーが使用されてきたが、これらのポリマーは化石燃料の枯渇や温室効果ガスの排出に寄与するほか、有害な成分を含む可能性がある。一方、微細藻類は、急速な成長速度、培養中のCO2固定能力、そしてバイオ互換性といった特性から、持続可能な3Dプリンティング素材を生産する「バイオファクトリー」として適しているが、ブラスコ教授によれば「これらの利点にも関わらず、微細藻類が光ベースの3Dプリンティングの原料として考慮されたことはほとんどない」という。

研究チームによる実験では、オドンテラ・アウリタとテトラセルミス・ストリアタを選択し、トリグリセリドをアクリレートで機能化して、光照射下での迅速な硬化を可能にした。また、微細藻類に含まれる光活性緑色色素が光開始剤として機能することが確認されており、従来のインクで使用される有害な添加物を避けることができるとしている。
研究チームはこの新しいインクシステムを用いて、複雑な構造を持つ3Dマイクロ構造を高精度で製造することに成功しており、細胞培養実験では、微細藻類ベースのインクがほぼ100%の生存率を示した。「この成果は、より持続可能な光による3Dプリンティングだけでなく、3D細胞培養やバイオ互換性インプラントなど、生命科学分野への応用に新たな可能性を開く」とブラスコ教授は述べている。

この研究は、ハイデルベルク大学とカールスルーエ工科大学(KIT)の共同プロジェクト「3D Matter Made to Order」の一環として行われ、ドイツ研究財団、カール・ツァイス財団、化学産業基金、そして欧州連合の欧州領土協力プログラムの支援を受けており、この研究成果は、科学雑誌『Advanced Materials』に発表された。


関連記事

3DP id.arts の最新投稿をお届けする「Newsletter 3DP id.arts」への登録はこちら

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でid.artsをフォローしよう!

     

ページ上部へ戻る