3Dプリンタで異なる金属を一体成形

ペンシルベニア州立大、異なる金属粉末を同時に造形する3Dプリント技術を開発

ペンシルベニア州立大学が 3D Systems と共同で運営する CIMP-3D(革新的材料プロセスセンター)」の研究チームは、3Dプリンターによって異なる2種の金属(ステンレス鋼とブロンズ)を一体構造で造形する新技術を発表した。この「マルチマテリアル金属3Dプリント技術」は、従来溶接でしか実現できなかった金属同士の融合構造を、より精密かつ複雑な形状で再現可能にする。

ステンレス鋼、インコネル、純銅の3種類の金属からなるテストプレート

この技術の鍵は、「Aerosint selective powder deposition system」と呼ばれるプロセスにある。小麦粉のように微細な金属粉末をマイクロメートル単位で選択的に配置し、レーザーで瞬時に溶融・結合させることで、異素材を高精度に融合できる。使用されたシステムは、2023年に導入された新機材であり、同大学の既存3Dプリンターと統合することで実現された。

3種の粉末原料を充填するための3つのドラム

研究チームは造形中の溶融状態をリアルタイムで監視し、X線CTによって内部の欠陥(亀裂や気泡)や金属の界面構造を高精度に解析。さらに、造形方向(垂直・水平・斜め)と欠陥の発生傾向を結びつけ、構造体の信頼性向上に向けた知見も得られた。この手法で造形された部品は「ジャイロイド構造」と呼ばれる複雑な三次元形状で、熱交換器や医療インプラントなどへの応用が期待されている。従来は製造が困難だったこのような複雑構造も、3Dプリント技術によって現実のものとなってきている。
研究チームは、インコネル(耐熱合金)や純銅など、他の金属材料への応用も視野に入れており、造形中の状態監視や品質管理を強化し、量産に向けた生産体制の構築を目指している。

この研究は、金属3Dプリンターの新たな可能性を示す重要な成果であり、将来的には航空宇宙、自動車、医療といった多様な産業分野への応用が期待される。


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