3Dプリンタで作る「電源不要の光る皮膚」が水中通信や安全対策を変える
シンガポール国立大学（NUS）の研究チームは、3Dプリント技術を用いて「光る皮膚（Auxetic Self-powered Mechanoluminescent Photonic Skins）」を開発した。「Advanced Materials」誌に掲載されたこの新素材は、水中でも外部電源を必要とせず、曲げたり伸ばしたりする機械的な力によって明るく発光する。
この素材は、発光する銅ドープの硫化亜鉛（ZnS:Cu）微粒子と柔軟なシリコンゴムを混ぜた特殊インクを使い、ダイレクトインクライティング（DIW）という3Dプリント技術で製造されている。伸縮時に横にも広がるオーセティック構造を活用し、関節部やロボット、曲面のある装置にもシワなく密着するよう設計されており、透明なシリコンで包むことで、引っ張り動作10,000回にも耐える均一な光を実現。従来の発光素材に見られた光のムラや早期破損といった課題も克服している。
この素材の応用例として、水中でのモールス信号による手話のような通信や、ガス漏れ検知、さらには水中ロボットへの搭載が試みられている。例えば、手袋に装着したスキンを指で曲げると「UP」「SOS」などの信号が発せられる。さらに、漏れのあるタンクの表面に貼ることで、漏れ箇所に機械的な刺激が加わるとその場が明るく光り、可視的に異常を知らせることができる。
この研究は、次世代の3Dプリント技術が持つ多機能素材への進化を象徴しており、電気系統を伴わない新しいセンサーレスの光通信インフラとして、深海作業や水中ドローン、安全設備など多方面への展開が期待される。
関連記事
3DP id.arts の最新投稿をお届けするニュースレターへの登録はこちら
最新情報をお届けします
Twitter でid.artsをフォローしよう！
Follow @idarts_jp
