Nikonの巨額減損で露呈した金属3Dプリンティング市場の現実

巨額減損の衝撃、ニコン決算が映した産業用3Dプリンター市場の意外な現状

Nikonは金属3Dプリンター事業の将来性を見直し、SLM Solutions買収関連資産について約900億円の減損を計上。市場競争の激化と需要伸び悩みを背景に、産業用3Dプリント技術の収益化には想定以上の時間がかかる現実が浮き彫りとなった。

減損とは、企業が保有する資産の価値を将来の収益見込みに合わせて引き下げる会計処理である。今回の計上は現金支出を伴わないが、「当初の想定ほど利益が出ない可能性が高まった」と公式に認めたことを意味する。評価は売上成長率・利益率・金利などをもとに算出されるため、これらがわずかに悪化するだけでも長期予測では資産価値が大きく下がり、設備投資額が大きい金属分野では特に影響が大きい。

同社はこれまで大型装置や航空宇宙・防衛分野を中心に展開してきたが、これらは利益率が高い一方、導入までの認証や試験に数年かかることも多く、受注は一括型になりやすい。そのため売上が安定しにくく、短期的な収益化が難しいという特徴がある。さらに近年は需要の伸び悩み、金利上昇による投資抑制、低価格競合の増加が重なり、市場環境は厳しさを増している。

こうした状況は業界全体の傾向でもある。過去には大手企業や専業メーカーも同様の減損を計上しており、理由はいずれも「普及スピードが想定より遅い」ことだ。つまり技術価値が低いのではなく、産業導入には時間がかかるという構造的な課題がある。
重要なのは、減損は撤退を意味しない点である。装置出荷や研究開発は継続されており、同社もデジタル製造を将来の柱と位置付けている。今回の処理は、過去の楽観的な予測を現実に合わせた調整であり、市場が成熟段階へ移行しつつあることを示すシグナルといえる。今後は急成長よりも、実用分野ごとの着実な普及が成長の鍵となる。


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