JAXA、3Dプリンタ活用の月着陸船の打上げに成功

JAXA、3Dプリント技術を活用した小型月着陸実証機(SLIM)の打ち上げに成功

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下 JAXA)は、2023年9月7日に種子島宇宙センターから「H-IIAロケット47号機」に搭載されたX線撮像分光ミッション(XRISM)および小型月着陸実証機(Smart Lander for Investigating the Moon 以下 SLIM)の打ち上げに成功。ロケットは予定通り飛行し、XRISMは打ち上げから約14分9秒後、SLIMは打ち上げから約47分33秒後にロケットから正常に分離されたことが確認された。
JAXA|XRISM/SLIM特設サイト 

SLIMの着陸脚の先端には、3Dプリンタで作られた金属製のラティス構造が取り付けられており、月面に接触する際にこのラティス構造が潰れることで運動エネルギーを消費し、接触時の荷重を規定以下に抑え確実な着陸を実現する。

SLIMの2段階着陸

従来、こうした自身が破壊することによって運動エネルギーを消費し衝撃を抑える機構には、アルミニウム箔製のハニカムコアが使われていたが、アルミハニカムは構造の異方性のため1方向からの荷重にしか対応できなかった。この課題を異方性の少ない3Dプリントされたラティス構造により解決。まるで転がるように月面に着陸することができる。

衝撃吸収材と衝撃吸収材が潰れる瞬間

この特殊な構造は、将来の月探査機に必要なピンポイント着陸技術を開発するというJAXAのミッションの鍵を握っており、このプロジェクトは、より高機能な観測機器の軽量化や、将来の太陽系探査を視野に入れた資源の乏しい惑星への着陸を目指している。

SLIMプロジェクトは、将来の月探査機に必要なピンポイント着陸技術を研究し、それを小型探査機によって月面で検証するミッションが含まれる。SLIMランダーを作ることで、人類はこれまでのように着陸しやすい場所だけでなく、着陸したい場所に着陸できるように質的な転換を図る。

image : twitter.com/SLIM_JAXA

現在では、対象となる天体の知識が増え、研究すべき内容が具体的になってきているため、研究対象の近くに高精度で着陸することが必要になってきている。また、将来の太陽系探査機にはより高機能な観測装置を搭載する必要性が生じている。その時に備え、プローブシステムの軽量化が進められており、観測機器にリソースを振り分けるためにもプローブの軽量化は必須となる。
SLIMは、将来の月探査機に貢献するだけでなく、探査機システムの小型軽量化とピンポイント着陸技術の実現を目指している。


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