- 2025-6-11
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SLIMの月面着陸を支えた3Dプリント部品が大阪・関西万博に登場
日本積層造形(JAMPT)が金属3Dプリンターで造形したアルミニウム製「衝撃吸収材」が、大阪・関西万博の日本館「ファクトリーエリア」に展示されている。この部品は、2024年1月に月面へのピンポイント着陸に成功した小型月着陸実証機SLIMに搭載されたパーツであり、日本初の月面軟着陸という歴史的成果を陰で支えた。
日本政府館の展示風景
SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が開発した小型の月探査機で、「狙った場所に正確に着陸する」ことを目指す技術実証機である。従来の月探査機が数キロ単位での着陸誤差を許容していたのに対し、SLIMは55メートルという非常に高精度な着陸を実現し、世界的にも注目を集めた。
この高度な着陸精度を支えたのが、JAMPTの金属3Dプリント技術により実現されたラティス構造(格子構造)の衝撃吸収材である。半球形のこの部品は、着陸の衝撃を“潰れることで受け止める”という設計思想のもとに開発されており、主脚と補助脚の5本に装着された。耐久性と軽量性を兼ね備えたこの特殊構造は、従来工法では再現困難な領域であり、3Dプリント技術だからこそ実現できた部品である。
衝撃吸収材使用前(左、試験後(右
今回の展示は、万博会期中(〜2025年10月13日)を通じて行われており、来場者は日本の「循環型ものづくり」の一例として、この衝撃吸収材を間近に見ることができる。展示は、京都・木津川の「流れ橋」と共に紹介されており、「壊れることで守る」構造デザインの思想がテーマとなっている。
金属3Dプリント技術は、金型を使わず複雑な形状を短期間で製造できることから、宇宙開発や航空、医療分野での応用が加速している。JAMPTは、材料粉末の開発から造形、量産まで一貫して対応できる企業として、今後も3Dプリント技術で持続可能な社会と未来を支えていく構えだ。
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