食品安全基準を満たす3Dプリント技術

食品業界向け3Dプリント技術が進化、材料と後処理の統合で安全性と実用性を両立

フランスの材料メーカー FABULOUS と後処理技術企業 AMT が、食品業界の安全基準を満たす3Dプリント部品の製造ワークフローを共同で検証し、食品接触用途に対応した3Dプリント技術の実用化を目的とした国際規制に基づく試験をクリアするワークフローを確立した。

食品加工や包装の現場では、使用する部品の材料選定に厳しい目が向けられる。ステンレス、ガラス、規格適合プラスチックなど、いずれも衛生面と安全性の観点から選ばれた素材だ。3Dプリント部品がこの世界になかなか入り込めなかったのには理由がある。造形時に生じる微細な空隙(ポーラス構造)が細菌の温床になりかねないという懸念で、いくら形状の自由度が高くても、「洗い切れない」「汚染リスクがある」という壁は越えられなかった。その状況を変えようとしているのが、両社が提供する二つの技術の組み合わせだ。FABULOUSが提供する「DETECT PA11」は、粉末焼結(SLS)方式に対応したバイオベースのナイロン材料で、青色で視認しやすく、光学・磁気・X線のいずれでも検出できる。異物混入が即アウトな食品・医薬分野向けに設計されており、「もし部品が欠けても見つけられる」という安心感が製品設計に最初から組み込まれている。ただし、材料の安全性だけでは十分でない。造形後の表面に残る微細な穴をどう処理するかが、もう一つの課題だった。そこにAMTの蒸気平滑化技術「PostPro Pure」が加わる。蒸気で表面を溶かして再結合させることで密閉構造をつくり、洗浄性を高めながら細菌が入り込む隙間をなくす。材料と後処理、二つのピースがはまったことで、食品用途への道が現実味を帯びてきた。

今回の検証は認定を受けた第三者機関が担当し、米国FDA規格(21 CFR §177.1500)と欧州規則(EU No 10/2011)の双方に基づく食品接触材料試験を実施。すべての結果が規制値を十分に下回ることが確認されている。欧州ではすでにコンベア部品やロボットハンド、交換部品などへの採用が進んでおり、2024年には米国でもFDAのポジティブリスト認証を取得した。

この変化が意味するのは、単なる素材の拡充ではない。少量・短納期・複雑形状という3Dプリントの強みが、食品業界でようやく活かせる環境が整いつつあるということだ。従来の切削加工や射出成形では金型費用や最低ロット数の壁があったが、3Dプリントならそこを回避できる。


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