3Dプリントで実現する「曲がるコンクリート」

3Dプリントで実現する鉄筋不要の自己補強型コンクリートがインフラ維持コストを削減し建設現場の自動化を後押し

米国ニューメキシコ大学(UNM)の土木・建設・環境工学部(Gerald May Department of Civil, Construction, and Environmental Engineering)の研究者チームが、3Dプリント技術向けに設計された「自己補強型超靭性セメント系材料(Self-reinforced ultra-ductile cementitious material)」の特許を取得した。これは、従来のコンクリートが弱点とする引張りに対して高い耐性を示し、鉄筋などの外部補強を減らした3Dプリント構造物の実現を目指す画期的な技術である。

従来の建設現場では、重量のある鋼材や木材を人手で組み立てる必要があり、コスト面と安全面で課題があった。一方で、3Dプリンタによるコンクリート造形は自動化の可能性を秘めているが、従来のコンクリートが引張りに弱いという問題から、鉄筋や補強材の設置を完全には省けず、自動化の利点を最大限に生かしきれていなかった。今回特許が取得された超靭性セメント系材料は、内部に大量の短い高分子繊維を組み込むことで、曲げや引張りがかかった際にもひび割れを起こしにくく、構造全体を保持し続けることができる特徴をもつ。
この技術の重要なポイントは、3Dプリントに適した粘度や流動性を保ちながら十分な強度と靱性を両立させる点にある。繊維量が少なすぎると素材が自立できずに崩れやすくなり、多すぎるとノズル詰まりを起こしてプリントが困難になる。研究チームはポリビニルアルコール(PVA)やフライアッシュ、シリカヒューム、超高分子量ポリエチレン繊維などを組み合わせ、プリントした部材の曲げ強度や引張り強度を丁寧に検証しながら、最適な配合を突き止めたという。

南中部地域(Region Six)の大学交通センターであるTransportation Consortium of South-Central States(Tran-SET)からの助成金を受け特許取得に至った今回の研究は、3Dプリント可能な超靭性材料の開発と評価、さらにはエコ・コンクリートを用いた研究プロジェクトの一環として行われている。
耐久性に優れたコンクリートを3Dプリントで造形できれば、地震や強風などの災害に強く、メンテナンスコストの低減にもつながる。研究チームは今回の特許技術を活用し、公共インフラから住宅、橋梁、さらには人が入りにくい危険な建設現場への適用を視野に入れており、3Dプリント技術の可能性を大きく広げる「曲がるコンクリート」が、今後の建設業界に革命をもたらすことが期待される。


関連記事

3DP id.arts の最新投稿をお届けするニュースレターの登録はこちら

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でid.artsをフォローしよう!

     

ページ上部へ戻る