バンコクに誕生した3Dプリント歩道橋

バンコク歴史地区に3Dプリント技術で架橋された低炭素コンクリート歩道橋が都市の伝統と未来をつなぐ

タイ最大級の総合素材・建設ソリューション企業である Siam Cement Group(SCG)は、バンコク旧市街のオンアン運河に、3Dプリンターを用いて製作した歩道橋を完成させた。低炭素コンクリート「LC3」やデジタル製造技術を活用し、環境負荷を抑えながら文化的・歴史的景観に調和するデザインを実現したこの橋は、19のモジュールを3Dプリントして構築するタイ初級の大規模インフラプロジェクトであり、持続可能な都市づくりに向けた新たな指標となる。

SCGが完成させた3Dプリンター製歩道橋は、バンコクの歴史的なオンアン運河地区に新しい文化的アクセントを生み出している。かつて防衛用の堀として整備され、のちに商業水路として発展した運河の歴史を踏まえ、橋のデザインは「水の流れ」を象徴する曲線で構成されており、光が揺れる水面のような陰影により、視覚的な重さを感じさせない柔らかなシルエットを特徴としている。また、手すりにはタイの伝統模様「クラノック」をモチーフにした線形が採用され、近代技術と文化遺産の融合が意図されている。
3Dプリント技術は複雑な曲面構造を精密かつ効率的に形にできるため、従来の型枠工法では表現が難しい造形を実現した。

素材には、セメントの一部を焼成粘土に置き換えることでCO₂排出量を大幅に抑える低炭素コンクリート「LC3」を使用。これは、強度を確保しつつ環境負荷を減らす先進素材であり、運河周辺が陶器や土器の商いで栄えた歴史と響き合う点でも象徴的だ。各セグメントは高性能コンクリートで補強され、1平方メートルあたり500kgの荷重に耐える構造を持つ。

SCGは、施工現場が狭いという課題に対し、橋を19のモジュールとして事前に3Dプリントし、現地で組み立てる方式を採用した。各モジュールは約1.5トンで、クレーン1台で1日で設置が完了し、地域への影響を最小限に抑える成果を上げた。

こうした取り組みは、都市インフラの省力化・省資源化を進める肯定的な視点だけでなく、耐久性や長期メンテナンスの課題への慎重な視点も必要とする。しかし、歴史地区との調和、環境負荷の削減、デザイン自由度の向上といった利点を踏まえると、3Dプリンターと3Dプリント技術は将来の橋梁・公共インフラの選択肢としてますます重要になると考えられる。


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