漁網を高性能ナイロンへ再生する3Dプリント技術

海のゴミが3Dプリント材料に。インドの研究機関が漁網ナイロンを2分で再生する新技術を発表

インド科学研究所(以下 IISc)の研究チームが、漁網や自動車部品などに使われるナイロン66(PA66)を、わずか2分で再生して3Dプリンター材料に変える新しい方法を開発した。廃プラスチックにメラミンを加えて化学的に再構築するこの技術により、海洋ゴミを高性能な素材へと蘇らせることが可能となった。

IIScの材料工学科が発表した新技術は、これまで再利用が難しいとされてきたナイロン66を、高品質な3Dプリント材料として蘇らせる画期的なリサイクル法である。ナイロン66は、漁網や自動車部品などに多く使われるが、熱を加えて溶かすと分子構造が壊れやすく、再生しても性能が落ちてしまうという課題があった。
今回の研究では、溶けた廃ナイロンにメラミンという化学物質を触媒の力で加えることで、分子同士を再び“つなぎ直す”ことに成功した。この化学反応は「トランスアミド化」と呼ばれ、産業用エクストルーダーでわずか2分以内に完了する。結果として、再生されたナイロンは3回再処理しても強度を維持し、従来よりも高い性能を示した。

研究チームは、実際に再生されたナイロンを使い、3Dプリンターで椅子や小型ボートを造形する実験にも成功している。わずか2分で廃棄物を資源化できるこの方法は、大規模なリサイクル設備を持たない地域でも導入しやすく、海洋ごみ削減にも貢献する可能性が高い。さらに、この技術をもとに設立したスタートアップ「VOiLA3D」では、再生ナイロンを使った生活用品や建材の開発を進めている。

漁網からリサイクルされた3Dプリント用材料 Fishy Filaments 

この新しい3Dプリントリサイクル技術は、単にプラスチックを再利用するだけでなく、「ゴミを資源へ変える循環型ものづくり」の実現を後押しするものである。廃棄物から新しい価値を生み出す発想は、持続可能な社会への大きな一歩となるだろう。


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