- 2025-8-11
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3DプリンターとPGSで最小材料・解体再利用を両立する低炭素コンクリート橋
3Dプリンターで造られたコンクリート部材を鋼ケーブルで組み立てる低炭素橋梁である「Diamanti Bridge」は、接着剤や充填材を一切使わず、分解して再利用できるモジュール構造を特長としている。設計には力の流れを可視化して最適形状を導く「PGS」手法を採用し、材料使用量を大幅に削減。橋梁の設計・施工・ライフサイクルを根本から変える可能性を示した。
「Diamanti Bridge」は、欧州文化センター(ECC)が主催する建築展「Time, Space, Existence」にて公開された低炭素型橋梁プロトタイプであり、設計はペンシルベニア大学Polyhedral Structures Laboratory(PSL)のMasoud Akbarzadeh教授が主導し、スイスのSikaが開発した特製コンクリート配合、オランダのVerticoとフランスのCarsey3Dが製造を担当した。
全長2.5mの展示モデルは、9つのプレキャスト部材を鋼ケーブルで後緊張結合(ポストテンション)し一体化。接着剤やグラウトを使わず組み立てられ、解体・再利用が可能だ。9mスパンでの強度検証も完了し、スケール拡張性も実証された。
技術的特徴
- PGS(Polyhedral Graphic Statics)設計
力の流れを可視化し、圧縮・引張の経路に沿った最適形状を導く設計法。不要な材料を排除し、剛性を保ちながら部材を軽量化できる。 - ロボットによる3Dコンクリートプリント
二成分セメント系材料をロボットアームで積層成形。各部材には中空部と反曲面を組み込み、構造性能を高めつつ材料使用量を削減。 - 可逆的モジュール構造
無接着・無充填の接合方式により、現場での施工が迅速かつ将来の解体も容易。循環型インフラの実現に直結する。
意義と課題
この橋梁は「低炭素・省資源・循環性」を同時に達成する新しい建設モデルで、次のようなメリットがある。
- 材料効率:必要最小限の材料で必要強度を確保
- 施工スピード:モジュール化により現場工期短縮
- 循環利用:解体・再利用を前提に設計
一方で、実装に向けては耐久試験の長期データ、規格適合性の確立、ロボット施工コストの低減が課題として残る。
画像提供:@masoudakbarzadeh
本プロジェクトは「力に従う形」と「可逆的な構法」を3Dプリントコンクリートで結び、低炭素・省資源・ライフサイクル最適化という建設の要請に対し、実務的な解を提示したと言える。橋梁に限らず、仮設インフラや期間限定の都市施設、将来の移設を想定する構築物などへの展開も現実的である。
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