3Dプリント技術が築く未来の二階建て住宅

産学連携と20社の共創で、国内初の二階建て3Dプリント住宅が完成

国内で3Dプリント住宅開発を推進する(KIZUKI)とオノコム(ONOCOM)は、宮城県栗原市において日本初となる「二階建て3Dプリンター住宅」を完成させた。本プロジェクトは、建設・材料・機械・技術分野の国内外20社以上が協力し、産学連携によって実現した先端的取り組みである。

日本の建設業界では、熟練職人の高齢化と深刻な人手不足が続く中、3Dプリント技術は工期短縮やコスト削減などの面で注目されてきたが、建築基準や構造的ハードルの高さから、国内での実例は平屋が中心であり、多層階住宅の実現は困難とされてきた。本プロジェクトでは、地域の職人と多くの企業が新旧技術を融合し、構造強度、安全性、設計自由度という多層階特有の課題をすべて乗り越え、日本の3Dプリント建築の未来を切り開く成果を上げた。

今回の住宅は、日本で初めて基礎から二階建て構造体までを現場で一体的に3Dプリントした点に大きな特徴がある。通常は基礎・構造・仕上げを別工程で分業するが、本建築ではRC構造や鉄筋を除いた大部分を大型3Dプリンターで一貫施工し、従来の手作業中心の工程では難しい精度と再現性を実現している。材料には、タイの大手建材メーカーSCG(Siam Cement Group)が開発した3Dプリント専用モルタルを採用し、日本の建築基準や気候条件に合わせて調整。これにより、複雑な形状や多層構造でも高い安全性を保ちながら、高精度なプリントが可能となった。

さらに本住宅では、壁の内部に「意匠デザイン」「構造フレーム」「設備スペース」を同時に形成する三層構造を取り入れ、従来は複数工程が必要だった作業をワンステップで成形している。この“多機能壁”により現場作業の大幅な削減、設備配管の自由度向上、施工ミスや品質のばらつき抑制など、多くのメリットが生まれている。内装にはSpacewasp社の樹脂系3Dプリンターで製作したキッチンや、積彩社の3Dプリントインテリアを取り入れ、建築とデザインがシームレスにつながる新しい住空間を創出している点も特徴的である。

日本の住宅の多くが二階建てであることを考えると、今回の成功は3Dプリント住宅の普及に向けた大きな一歩だといえる。量産環境が整えばコストが下がり、一般住宅としての採用も現実味を帯びてくる。また、一度モデルを作り込めば、毎回詳細設計をやり直す必要がなく、同品質の構造を効率的に複製できるため、再現性と生産性を兼ね備えた未来型の住宅生産方式として期待されている。今回の取り組みは、労働力不足という現実的な課題に向き合いながら、テクノロジーによって建築の可能性を広げる画期的な事例であり、次世代の住宅づくりに新たなスタンダードを示すものとなった。


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