3Dプリンターが変えた航空整備、F-15復活の決定打

3Dプリント技術による部品内製と設計最適化がF-15戦闘機の長期停止リスクを解消

米海軍航空システム司令部(NAVAIR)のアディティブ・マニュファクチャリング(AM)チームは、前線での即応力向上を目的に、3Dプリンターと3Dプリント技術を活用した整備支援を実施した。沖縄・嘉手納基地で損傷が見つかったF-15戦闘機に対し、空軍と海兵隊が協力し、従来なら数か月かかる修理をわずか数時間で完了させ、戦線復帰を大幅に前倒しした。

今回の事例の発端は、F-15戦闘機の操縦席内部にある「冷却ダクト」と呼ばれる部品のひび割れだった。この部品は操縦席の電子機器を適切な温度に保つ重要な役割を担っているが、通常であれば交換部品の調達に時間がかかり、機体は3~4か月間飛行できない状態になると見積もられていた。
当初、整備担当者は既存部品をできるだけ活かす従来修理を検討していたが、補給の遅れや入手困難性を考慮し、3Dプリンターによる部品製造へ方針を転換。3Dプリント技術とは、設計データをもとに材料を積み重ねて立体物を作る製造方法で、必要な部品を現地で短時間に作れる点が大きな特長である。

試作段階では技術的な課題も発生したが、同型の3Dプリンターを保有していた海兵隊の整備部隊が協力し、設計データを共同で検証した結果、部品の向きを工夫することで不要な「支え構造」を減らし、強度を保ったまま造形時間を約2時間短縮する設計改善に成功。この部品は、12時間以内に製造・適合確認まで完了している。

この取り組みは、単なる応急対応にとどまらない。改良された設計条件は、現在では米空軍の正式な3Dプリント技術資料として登録され、他のF-15整備にも展開されている。
従来の軍需産業では「部品は工場で作り、前線に運ぶ」ことが前提だったが、3Dプリンターの普及により、「必要な部品を、必要な場所で作る」という考え方が現実になりつつある。一方で、すべての部品が3Dプリントで代替できるわけではなく、材料特性や安全認証など慎重な検証も不可欠だ。今回の事例は、3Dプリント技術が航空機整備や防衛分野において、コスト削減・時間短縮・稼働率向上を同時に実現できる現実的な手段であることを示している。


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