- 2025-1-9
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AIとコラボレーションがもたらす製造革新、3Dプリントソフトウェアが切り拓く新時代
3Dプリント技術(Additive Manufacturing 以下 AM)におけるソフトウェアの重要性は、2025年に向けてさらに高まる見通しである。これまでハードウェア中心に語られることが多かったAM業界は、近年ソフトウェアへの投資や新興企業の登場によって急速に変化しつつある。特にAI(人工知能)やオープンソースの活用、ワークフロー全体をつなぐプラットフォームの構築が、次世代の3Dプリントを大きく左右すると考えられている。こうした背景から、大手企業やベンチャー企業は、CADやシミュレーション、スライスソフトといった従来の機能を統合し、より包括的なソリューションを提供しようとしている。ソフトウェアが最適化によるビルドコスト削減や不良率の低減を実現することで、製造分野の収益性を向上させる具体的な成果が生まれ始めている。
※ 本記事は、海外メディアで報じられた情報を参考に再構成した内容です。
MaterialiseのCEOであるブリジット・ド・ヴェイトヘン氏は「AM産業は技術だけではなく、顧客の視点に立ったアプリケーション開発が重要になります。単独の技術革新にとらわれるのではなく、業界全体で協力し、価値を生み出すエコシステムを形成する必要があります」と強調。同氏の言葉にある通り、AM産業がより大きな成果を生み出すためには、技術者やOEM、ソフトウェアプロバイダー、さらに顧客企業を巻き込んだ連携が不可欠である。
一方、Siemensのアディティブ・マニュファクチャリング担当副社長であるカーステン・ホイザー氏は、AIの活用が今後の3Dプリントを支える大きな柱になると予測している。設計工程の高速化や「コパイロット機能」による自動化が進むことで、生産量と品質の向上、そしてコスト削減が同時に実現する可能性が高まるという。また、クラウドを活用したサブスクリプションモデルの浸透により、必要な機能を柔軟に追加・拡張できる環境が整いつつある。
さらに、Develop 3D誌の編集長であるスティーブン・ホームズ氏は「実用的なAIが従来のCAD環境に組み込まれることで、設計やシミュレーションが格段にスピードアップします」と見通しを述べている。これはスタートアップ企業のPanOptimizationや1000 Kelvinなどが手掛ける最適化ソフトウェアにも当てはまり、より複雑なパーツやシステムのシミュレーションが可能になることで、物理的なテストビルドが不要になる場面も増えると期待されている。
その一方で、AM産業におけるソフトウェアの“古さ”を指摘する声も根強い。
1000 KelvinのCEOであるオマー・フェルガニ氏は「高コストや品質のばらつき、スケールアップの難しさは、ほとんどが旧来のソフトウェア基盤に起因します。AIの導入はこうしたギャップを埋め、業界全体の専門知識不足を補うカギとなります」と述べている。AMの大量生産化が進む中で、蓄積されたデータを活用し、精度と効率を高められるソフトウェアの需要がさらに高まるだろう。
また、オープンソースの盛り上がりも見逃せないポイントである。Autodeskのアレクサンダー・オスター氏は、プリンターやサービスがコモディティ化していく中で「真の差別化はAIを活用したソフトウェアの高度な制御技術やワークフローに表れます。ハードウェアやサービスが汎用化するほど、CADやシミュレーションなどのソフトウェアレイヤーで提供される付加価値が勝負を左右します」とコメントしている。OEM企業も、フルソリューションからシステム統合へと役割が移りゆく中で、ユーザー自身が主体的にソフトウェアを活用するケースが増え、AMの普及がさらに加速する見込みだ。
サブスクリプションモデルの普及は、ソフトウェアビジネス全体の収益構造を変えつつある。かつては日常的に使うCADやスライスソフトが主力製品だったが、今後は「テキスト入力だけで複雑な3Dモデルを生成する」ような斬新な機能が、新規ユーザーを呼び込み、企業のサブスク収益を牽引していくと期待される。3DプリントとAIを組み合わせた新しいツール群が“使ってみたい”ユーザーをさらに増やし、業界全体の市場拡大へつながっていくのだ。
こうした一連の動向が示すように、2025年の3Dプリントソフトウェア市場は大きな変革期を迎える。高水準の設計・解析技術とAIを活用した最適化機能を備えたソフトウェアが、生産現場のコスト構造を変え、品質と信頼性を飛躍的に高める可能性は十分にある。多くのスタートアップが参入し、大手企業との協業や買収が相次ぐなかで、3Dプリント技術は今後ますます高度化し、幅広い産業での導入が進むだろう。これはユーザーにとっても大きなチャンスであり、コラボレーションやオープンソースの動きとともに、未来の製造業を形作る原動力となるに違いない。
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