3Dプリンターが蘇らせた1400年の仮面芸能

3Dプリンターで仮面を再生、古代芸能の再解釈に挑むGK京都の試み

GK京都は、デザインと最先端の3Dプリント技術を融合させ、古代日本の仮面劇「伎楽(ぎがく)」の仮面を現代に再生させた。この面は、2025年9月27日に奈良県明日香村で行われた「行道(練り歩き)」にて、約1400年ぶりに蘇ったこの古代芸能が初披露された。

本プロジェクト「GIGAKU」では、舞踊家・森山開次氏のスケッチをもとにAIによる3Dデジタル化を実施。Eno-design、岡村工房、GK京都が協働し、4種類の仮面「迦楼羅」「崑崙」「治道」「獅子」を制作した。GK京都は、3Dプリンターによって造形したデータを精緻にブラッシュアップし、激しい動きにも耐えうる強度や軽量性を両立させた。さらに、デザイナーの彩色技術と現代塗料を駆使した塗装により、歴史の重みと現代的な美を併せ持つ質感を実現した。

制作は単なる復元にとどまらず、「古代芸能を現代的に再解釈する」デザインプロジェクトとして展開された。加えて、子どもたちが自由に絵を描くための「太子面」や、行道の演出を支える「布作面」も制作。これらは地域住民の参加を促し、文化を次世代へとつなぐ象徴的な試みとなった。

当日の「行道」では、仮面をつけた人々が古代の衣装を纏い村を練り歩く幻想的な光景が広がり、来場者は“時空を超えた祭礼”を体感した。3Dプリント技術によって蘇った仮面たちは、古代と現代、芸能とデザイン、地域とテクノロジーをつなぐ架け橋として注目を集めた。

「伎楽」は飛鳥時代に大陸から伝わり、日本最古の仮面芸能とされるが、鎌倉時代以降途絶え、長らく“幻の芸能”と呼ばれてきた。今回のGIGAKUプロジェクトは、その精神を現代のアーティストや住民の手で受け継ぎ、未来へと再構築する挑戦である。GK京都は今後も、3Dプリンターをはじめとする先端技術を通じて、伝統文化の新たな継承と創造に取り組んでいく。


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